新生児スクリーニングによる最初期の大きな成功は、フェニルケトン尿症という難病にかかわるものだ。フェニルケトン尿症の赤ちゃんは、食品のたんぱく質に含まれるフェニルアラニンというアミノ酸をうまく代謝できないため、たんぱく質を摂取すると脳に恒久的な障害を負うおそれがある。
新生児スクリーニングの導入前には、そうした脳障害を発症するまで、親は子どものフェニルケトン尿症に気づかなかった。また、気づいたときにはすでに、その家族のほかの子どもも同じ病気で脳がダメージを受けている場合も多かった。
だが、新生児スクリーニングではフェニルケトン尿症が必ず検査項目に含まれているため、導入後は生後すぐの段階でこの病気をもっているかどうかがわかるようになった。子どもがフェニルケトン尿症だとわかれば、親は脳へのダメージを避けられる特別なミルクや食品を与えられるようになる。親がこの病気に気づいていない場合、子どもが脳にダメージを受けないのはまさに奇跡的なことだった。
新生児スクリーニングは、小児医療の分野で過去100年で最も大きな成果のひとつとも称賛されている。米国内で生まれた赤ちゃんは生後数日以内にスクリーニングを受けることが法律で義務づけられている。ただし、親が宗教上の信念や慣行に反することを理由に拒否することは認められている。
新生児スクリーニングの存在を知っている親は、子どもの血液サンプルは病気のスクリーニングに使われるものと信じている。なかには、研究に使用される場合があることを認識している親もいるかもしれない。だが、採取された血液サンプルを州が何年も(一部の州では最長23年間)保存できることや、尋ねられていたらおそらく同意しなかったであろう目的にも使用できることを知っている人は、ほとんどいないだろう。
ニュージャージー州で最近起こされた裁判は、まさにこの点が焦点になっている。
ニュージャージー州の公選弁護人事務所が提起した訴訟によれば、ニュージャージー州警察は、9年前の新生児スクリーニングで血液サンプルを採取した検査機関を召喚した。サンプルは、子どもの父親と、25年以上前に起きた犯罪を結びつけるために使われたという。