ライフスタイル

2022.10.06 18:00

アマゾンを卒業して、私が買った美しい時計

Shutterstock(写真はイメージ)


コロナの影響を受け、変化した購買意欲


過去2年間に及ぶコロナ禍で、遠くに旅行に行けない代わりに、その分の予算を何か他のものにまとまって費やしたい、と感じた人も少なくないのではないだろうか。
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私もそのうちの一人で、コロナの間に、今までに買ったことも欲しいと思ったこともなかった高級ブランドのアクセサリーなどをインターネットで閲覧したり購入の可能性を検討したりするようになった。それでも大きな買い物をする一歩は踏み出せないでいたのだが、コロナが収束に向かい、誕生日がやってくるタイミングで、通販サイトでこの時計と出会ったのである(残念ながらアマゾンサイトではない)。

大きい買い物なので実際に時計を目にしてから購入したいと思い、銀座の時計屋さんに足を運んだのだが、旧モデルだったので店頭には置いていなかった。しかし、同じシリーズの時計があって、その現行モデルを腕に付けてみることができたので、どんな付け心地なのか、どのような感触なのかを体験できた。納得した思いで一旦帰宅し、2晩考えて、購入をやっとのことで決意した。

そして、である。かつてがさ子と呼ばれた私でさえ、この美しいSEIKOの腕時計を左腕に巻き、小時計が3つ中に収まったフェイスを眺めていると、心なしか左の手首が重くなったような感覚とともに、ほのかに誇らしいようなじんわりと嬉しい気持ちが呼び覚まされてくる。
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人生には晴れの日もあれば雨の日もあるけれど、どんな時も、この時計の素晴らしさに見合う、この時計の美しさにふさわしい自分でありたいと思わせてくれる──。良質のものを身につけると、その良さと素晴らしさに応えるため、「ふさわしい自分でありたい」という気持ちに包まれる。この気持ちは、アマゾンで培った、実力を着実に積み重ねるのが大事、という姿勢とかち合うものでもないようだ。

そして、少しの背伸びや見栄っ張りな姿勢はまた、振る舞いや所作、精神など、個人のポジティブな一面を形作っていくのだろう。こんなささやかだが確かな驚きと希望に、もうすぐ半世紀に手が届く年齢になって初めて、この時計が気づかされてくれた。ありがとうSEIKO、残りのもう半世紀弱も、どうぞよろしく。


高以良潤子◎ライター、翻訳者、ジャーナリスト。シンガポールでの通信社記者経験、世界のビジネスリーダーへの取材実績あり。2015年よりAmazon勤務、プログラムマネジャーとして、31カ国語で展開するウェブサイトの言語品質を統括するなど活躍。2022年より米国系大手エンタメ企業勤務。

文=高以良潤子 編集=石井節子

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