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2022.10.06 18:00

アマゾンを卒業して、私が買った美しい時計


アマゾンでの昇進は、一つ上のレベルのパフォーマンスを──


入社した際に筆者が上司から言われたのが、「アマゾンでの昇進は簡単ではない。どのレベルでも」という一言だった。シニアマネージャーからディレクターに昇進するのも、アソシエイトからマネジャーに昇進するのも、等しく難しい。一つレベルを上げるためには、順調に評価されて運が良ければ数年かかり、早い人だと1年のケースもあるが、ごくごく稀だ。10年以上同じレベルにとどまる人もざらにいる。

そして、アマゾンでの昇進は、「一つ上のレベルのパフォーマンスをすでに継続的に出している」と認められて初めて起こる、と定められていた。将来の期待値ベースで昇進させ、ポジションがその人を、肩書きに見合うように導いていくだろう、という考え方ではなく、次のレベルでのパフォーマンスを出してそれが認められて初めて、後から上の肩書きがついてくる、という考え方なのだ。

新たにポジションがオープンして求人を出す時にももちろんジョブレベルが設定されていて、レベルは外向きには公開されていないものの、社内で公募に応募したい時には、今の自分と同じレベルか、プラスマイナス1のポジションにしか応募できない決まりがあった。

そんな会社に比較的長く、7年半近くいたこともあってか、私は自分の中身やパフォーマンスを引き上げるのが先で、今より上の肩書きや待遇は十二分に実力がついて初めて得られるものだという考え方に染まっていた。ポジションが人を作るというより、スキルと実力を高めるのが大前提で、評価や昇進はそのあとに(運が良ければ)ついてくるもの、そう思っていたし、今でも半分以上そう思っている。

その延長線上で、品物はあとからついてくる、自分の中身を磨いてパフォーマンスを上げることが先決、と無意識に考え、高価な買い物をせずに来たのかもしれない。また、高いレベルの肩書きだけでなく、高いレストラン、高級なラウンジやバー、ハイブランドの装飾品やバッグや靴、洋服なども自分とはあまり縁がないものだと思っていた。格式の高い場で上品な装いをしてエレガントに振る舞う自信もなかったし、何より「エレガント」という言葉は自分から一番遠い形容詞だと思っていた。全くの余談になるが、とても仲の良かった父親は、がさつな私の態度から娘の私を常に「がさ子」と呼んでいたくらいだ。

このように、勤務先の人事制度のあり方に心なしか影響されていたかつての私だったが、コロナが続いている最中に、アマゾンを退職した。
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文=高以良潤子 編集=石井節子

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