北野:山崎さんのゴールとは?
山崎:ヘッドスパを「文化」にすること。お金もちになりたいという野心とは、別の意味での野心です。「ヘッドスパはこの人が広めたんだ」というふうにありたいです。お茶の世界でいえば千利休。「あの茶席はすごかった」「武将を陰で動かしていたらしい」という逸話がいまも語り継がれています。ヘッドスパでも「あそこに伝説の経営者がいっぱい来ていたぞ」となったら面白いでしょう?
北野:ちなみに「頭道(ずどう)」というあり方を提唱されていますが、どんな内容ですか?
山崎:頭を通して心が豊かになり、本来の美しさを取り戻し、体を目覚めさせるという、「心美体」における姿勢です。美容師やヘッドスパアーティストではなく、あくまで人間としての深さと広さを、徐々に木の年輪のようにもつ。しかし、軸は常にフレッシュな気もちであり、誠実さも兼ね備える。こうあることで、自らが一石を投じて周囲が幸せを感じる波紋を広げていける、といったところでしょうか。
北野:10年後、20年後、山崎さんがヘッドスパという文化を日本発で世界中に発信できたとき、実はそこに「道」の考え方も収まっていると。ヘッドスパを受けることが来日する理由にもなる。
山崎:禅の道場のように、ヘッドスパを体験する道場みたいなものがあって、外国の方がわざわざ日本にヘッドスパを受けに来て、体にいい日本の食品を食べて、という体験型施設ができる未来も面白そうですね。
それは日本だけではなくて、ミャンマーでもカンボジアでも、どこでもいいんです。そのとき、サイ・ババじゃないですけど、「この人が元祖だった」となりたいです(笑)。
常にフレッシュな状態に身を置く
北野:あらためて、山崎さんが一流の顧客から選ばれ続けるのは、なぜだと思いますか?
山崎:まずは唯一無二の「圧倒的な技術」だと思います。あとは、お客さんたちが「面白いやつや」と感じてくれているのかもしれません。常に1年目の気持ちを忘れないことを意識します。毎月、毎週のように来られるお客さんであっても、会う前は緊張しています。フレッシュじゃない限り、人はピュアな状態になれませんから。
独立したころ、年に何回か「急にフッとうまくなるとき」がありました。それはなんとなくやっていたら、きっと生まれてこない技術。常にお客さんのことを意識して、自分のやっている技術にしっかり意義付けながら励むことによって、「こういうことか!」という上達が生まれます。
8年、9年とたったいまでも、年に1回から多くて2回は上達があるんです。この成果を常に出し続けていくこと。それが、お客さんが飽きない存在でいられる理由ではないでしょうか。
北野:もし、目の前に18歳あるいは22歳の若者がいて「ヘッドスパアーティストになりたい」と言われたら、どんなアドバイスをしますか?
山崎:「尊敬できる人たちをいっぱいつくりなさい」と。それに「心が豊かであれ」です。僕は、後輩でも先輩でも、お客様でも家族でも、尊敬できる人たちに囲まれています。すごい人に限って謙虚です。だから尊敬するし、自分もそうありたいと思える。
あとは、運をつかんだほうがいいですね。「ここ」というところをつかめるか、つかめないか。常にアンテナを張ることが大事だと伝えます。
北野:山崎さんはさんはキャラが立っているから、きっと技術セミナーや講演もすごく面白いでしょうね。
山崎:講演中はギャグばかりですよ。
北野:それは、関西人の血がそうさせる(笑)。
山崎:笑いを取りに行け、というね(笑)。