ヘッドスパを「文化」として広めたい
北野:どうサービスを開発していったのでしょう。
山崎:お客様をガッカリさせないよう、香り、音、お出しする飲み物、カウンセリングの仕方……まずはすべてを「体験型」にすることからでした。
もちろん技術は不可欠です。人間の体をしっかり把握したうえで頭に入っていき、頭皮のマッサージだけでなく、内側の筋肉にアプローチして緩めていくことで緊張や本質的な疲れを取っていく。でも、さらに重要なのは「心」なんですね。美容室でもシャンプーが下手な人はずっと上達しません。「ここをもうちょっとかいてあげたら気持ちいいだろうな」といったキメ細かさの集大成がヘッドスパなんです。
例えばビジネスパーソンが「大事なプレゼンの前だからリフレッシュのために来た」という場合、北野さんにしたような「まったりしたヘッドスパ」だとリラックスだけで終わってしまう。だから「ポンと背中を押すヘッドスパ」に変えるんです。
北野:まさにカスタマイズですね!
山崎:そんな積み重ねを構築していくと、自然とお客様が増えて、口コミが生まれました。確実な手応えを感じるまでには2年半ほどかかりました。
北野:国内で技術セミナーをするほか、山崎さんは東南アジアでもヘッドスパを教えていますね。
山崎:もともとアジアにはマッサージ文化がありますが、シンガポールのラグジュアリーホテルなどであってもヘッドをやるところはほとんどありません。ヘッドスパは世界にまだまだ知られていないし、やれる人がいないんです。
そこで、タイやマレーシアなどより発展途上の国に行き、ヘッドマッサージを教えようと思いました。貧困層の方たちが手に職を付け、やがてはいろんな国に派遣できないかと考えたんです。
北野:どんな経緯で教えることに?
山崎:AAR Japan(認定NPO法人 難民を助ける会)という団体があり、そこが窓口役になって複数の企業がお金を出しあった技能訓練校をミャンマーに設立しています。そこでは「洋裁」「タイピング」に加えて、「美容」を訓練しているんです。いまほど政情が不安定ではなかったので、その学校へ行って教えさせてもらいました。
美容室に勤められない耳の聴こえない子、足を失った子たちなどが3カ月の訓練を終えて卒業していき、地元に戻って「青空美容師」をやるんです。外に椅子を置いて髪をカットする。ある意味、美容の原点でもあるんですよ。ヘッドスパでもそれができたらいい、アジアの貧困層の人たちや障がいのある人たちの仕事になったらいいなと思ってやり始めました。年4回は行こうと決めていましたが、コロナで中断しています。「ヘッドスパでこんなに人を幸せにできて、ここまで稼げるんだよ」と伝えたい。自分のお金もうけではなくて、必ず続けていこうと考えているミッションです。