IATA(国際航空運送協会)の発表によると、2023年の世界の航空旅客数は2019年比で94%まで回復する見通しだ。日本を含むアジア地域は、欧米と比べて水際対策が厳格なこともあり、9割まで回復するかは不透明な印象もある。しかしそれでも、2023年が日本のインバウンド消費復活の年になると私はみている。
今回は来るインバウンドの復活にむけて、コロナ前と今後で、消費者の行動や心理はどう変化するのか、そして日本企業が商機を取り込むために準備すべきことについて考えたい。
過去最高となる年間約3200万人が日本を訪れた2019年。日本政府観光局の国・地域別訪日者数をみると、最多が中国、次いで韓国、台湾と続き、東アジア地域が全体の7割を占める構造となっていた。
一方で、1人当たり旅行支出額についてはオーストラリアが最も高く(24万8千円)、次いで英国(24万1千円)、フランス(23万7千円)と西洋諸国が総じて高い傾向がみられた。また支出費目についてアジア諸国の訪日客と比較すると、特に「宿泊費」「娯楽等サービス費」の差が大きかった。買い物(モノ消費)中心のアジア諸国に対して、西洋諸国は体験型消費(コト消費)が中心なのだ。
しかし、モノ消費代表である中国からの観光客においても、「爆買い」というキーワードが脚光を浴びた2015年当時からすると、訪日旅行の目的や行き先は多様化してきている。トレンドExpressでは2021年末に「直近3年間で毎年1回は訪日観光を楽しんでいた中国の女性」600人にアンケートを行った。
買い物だけでは物足りない中国客
その結果によると、訪日意欲は衰えておらず、旅先として日本は「最も優先度が高い」、「トップ3に入る」が大多数を占めており、インバウンド復活時には訪日リピーターがまず動くのではないかと考えられる。喜ばしい結果だが、同時にそれは新たな課題を生んでいる。それはかつての様な「単純な買い物」だけでは物足りなくなっているという傾向だ。
実はアンケートでは、ショッピングよりも体験を重視した個人旅行や、日本の伝統産業を体験する地方巡り、予防医療を目的としたメディカルツーリズムなど、コト消費ニーズを満たす旅への意欲が向上していることが明らかになった。