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2022.10.07 16:00

高級ワインが自宅へ! 革新的なワインスクールを実現させたソムリエの挑戦

ワインの歴史は紀元前までさかのぼり、人類の歴史と同じくらい長いと言われている。フランス、イタリアなど伝統的な銘醸地、アメリカ、チリ、オーストラリアなどのニューワールドに加え、最近では日本、中国など新たな産地にも注目が集まり、これほど世界中でつくられ、楽しまれているお酒はほかにない。ただ、胸を張って「私はワインを楽しんでいる」と言える人は意外に少ないのではなかろうか。一念発起してワインスクールへ通っても、そこはソムリエやワインエキスパートなどの資格取得をめざすために知識を重視した学びの場であり、教材用のワインが美味しくないということもしばしば聞く話だ。かといって、ワイン好きが集まる“ワイン会”も、敷居が高いと感じる人は非常に多い。

「ワインは本来、もっと気軽に楽しめるお酒なんです」と語るのはソムリエの佐々木健太氏だ。ワイン愛好家の裾野を広げたいと、選り抜きのワインが小瓶で自宅へ届き、楽しく学べるワインスクールのサブスクリプションサービス「ホームワイン」をさまざまな革新的なチャレンジの末2021年にローンチ。順調に会員数を伸ばしている、その経緯について聞いた。



ワインは人生を豊かにしてくれる最高のツール


このコロナ禍は我々のライフスタイルにさまざまな変化をもたらした。なかでも飲食業界へのインパクトは大きく、多くのレストランやバーが閉店へと追い込まれた。一方で、外食できなくなった我々は “宅飲み”の心地よさや楽しさに気づき始めたのだろう。自宅でも上質な、こだわりのあるワインを飲みたいという人が増えてきた。

「ワインは世界中でつくられているお酒ですから、非常にバリエーションに富んでいます。でも、一般に知られている銘柄や生産者は大量生産されているものか、超高級ワインか……いずれにせよごくわずかです。ソムリエとしてワインを生産者から消費者へと橋渡しする立場から、もっとワインを広く知っていただきたいと感じていました。世界にはもっとおいしく、こだわりの感じられるワインがたくさん存在しているのに、と」


WINE TRAIL代表取締役佐々木健太氏

佐々木氏は21歳でソムリエ資格を取得し、渡仏。ミシュランの星付きレストランや5つ星ホテルでの勤務を経て、若くしてシニアソムリエ(現ソムリエ・エクスレンス)を取得、全日本最優秀ソムリエコンクール決勝に出場した経歴をもつ。

「ワインは食中酒ですので、ワインを楽しむということは食事を楽しむということでもあります。ワインを通じて世界のさまざまな食や、文化、歴史に触れることで、人との会話が広がり、同時に世界も広がります。ワインは人生を豊かにする最高のツールなんです」

「ワインをもっと知ってほしい」とワインスクールでの講座を受け持ち、彼の指導のもとソムリエ資格を取得した人は日本最多数だというから、ソムリエとしても、またエデュケーターとしても一級の佐々木氏だが、ワインスクールでの講座の在り方にはある種の違和感も感じていたという。

「日本のワインスクールはソムリエやエキスパートなどの資格取得をめざす講座が主流です。そのために学ぶ内容は知識重視の授業内容となり、ワインを楽しみたいというモチベーションで通うと期待外れになってしまうことも……。また、ワインの違いを体感するには多種多様なワインを飲む必要がありますが、1本750mlという規定量のワインを何種類も飲み比べるのは、なかなか大変ですよね(笑)。そこで、一般のワインスクールで提供されないような上質で高級なワインを少量ずつご自宅へお届けし、私の解説動画とともに学び、味わっていただけるサービスが作れないか——そう考えたのが自宅へ届くワインスクール『ホームワイン』のきっかけでした」


「ホームワイン」は、月額13,800円でお手頃かつ本格的にワインを堪能するためのプログラム。

ワインの味わいを損なわずに分注する、最新テクノロジーの導入


「ホームワイン」とはワインが100mlずつの小瓶入りで解説動画や教材とともに届けられ、自宅で好きなタイミングで学び、味わうことができる画期的なサブスクリプションサービスだ。毎月、ユニークなテーマに沿ったワインを4種×12か月、つまり1年で48種のワインを飲めるわけだが、このワインのセレクトも特筆に値する。通常のワインスクールで教材として試飲するワインがレストラン価格にして1本7,000円程度だとしたら、「ホームワイン」のワインは約2万円ほどだという。これほど高級なワインを100mlずつ小分けにしてしまうのはなんだかコワいようにも感じるけれど?

「それが私も一番危惧したポイントです。ワインは抜栓した瞬間から酸化が始まるため、小分けにすることで劣化してしまうのでは?と不安になりますよね。そこをクリアできたのは、ビジネスパートナーの岡前亮介のおかげでもありました」


「ホームワイン」をビジネス面、テクノロジー面から支える岡前亮介氏。

早稲田大学在学中に起業した岡前氏もまた、一消費者としてワインを愛好していたが、ワインの選び方に自信がもてないでいたひとりだった。ワインを好きになったきっかけは、留学先のニュージーランドでワイナリーを訪問し、つくり手のこだわりやブドウについて説明してもらいながら飲んだこと。

「いろんな想いや技術的な話を聞きながらワインを飲むのは最高に楽しく、忘れられない味わいでした。帰国してからワインをスクールで学ぼうとしたんですが、多忙であったこともあり、通いきれずに挫折しました。その後はひとりワインショップやスーパーマーケットの棚の前でどのワインを買えばよいのか悩む毎日……そんな時に、ぼくのような人へ向けたサービスがあればよいのに、と思いついたんです。無いならば自分でつくってしまおう、と」(岡前氏)

知識の習得だけをゴールとしない、ワインを楽しむための学びの場を創成できないものかと思いついたふたり。同じヴィジョンを共有しながらも、テクノロジーを専門領域とする岡前氏と、ソムリエの佐々木氏が出会ったことで、それぞれのミッシングピースが埋まり、理想の「ホームワイン」像を描くことができた。


人工知能で新薬開発研究をしている興野悠太郎氏とオリジナルの「ホームワイン ディスペンサー」を独自開発。

「ワインを小瓶に分注するプロセスがもっとも難関でした。普通に注ぐと香りが飛んだり、酸化により味わいが変わってしまったり……そこでアルゴンガス(空気中に含まれる無味・無臭・無色の気体アルゴンを使用した、酸化防止用のガス)をあらかじめ小瓶に満たしておき、そこへワインを酸素に触れさせずに注ぐディスペンシャーをイチから製作したのです。業界でも前例のないことですので、すべてを3Dプリンターで試作し、1年かけて開発しました。これで香りと味わいを一切損なうことのない小瓶化が可能となりました。テクノロジーの力ってすごいですね(笑)。」

750mlのワインをいったん開けたら数日のうちには飲み切らないといけない、というプレッシャーから解放されれば、飲めるワインのバリエーションはぐんと増す。多様なワインを味わうことで自分のワインの好みを知ることができれば、レストランでのオーダーもよりスマートに行えることだろう。


サービス構想や分注への理解を得るために、時にはインポーターや生産者へ何度も通い詰め、理想のラインナップを実現した。(写真はカナダワインのインポーター Jamie Paquin氏)


「このディスペンサーが開発できたことで、最初は小瓶化と聞いて難色を示していたワインインポーターたちも積極的に参画してくれるようになりました。インポーターへは直接赴き、生産者にもていねいに説明することで、現在は29社とお取り引きし、バリエーション豊かなラインナップをそろえることに成功しています。これも時間と手間のかかるプロセスでしたが、やはり稀少なワインを割り当てていただくことが重要ですから。ワインを楽しく学ぶには、まず美味しいワインを飲んでいただき、ワインを大好きになってもらう。これが鉄則です」(佐々木氏)

10分動画と「バイブル」 でワインをわかりやすく、面白く解説


「ホームワイン」では、グラス単価にして3000円ほどのワインが100ml×4種、つまり約4杯分が届けられるが、そこに同梱される教材も忘れてはならない。1杯をゆっくりと味わいながら飲み切りながら視聴するのにちょうどよい10分動画と、テーマごとにわかりやすく解説された教材「バイブル」には、ソムリエとしての佐々木氏の知恵と経験が結晶している。

「まさにここに私のお伝えしたいすべてが込められています。ワインそのものの成り立ちはもちろん、生産者のこだわりや、食卓で会話の糸口になりそうな歴史上の事件や面白エピソード、なかにはプチ小説まで。資格取得を目指すコースとはひと味も、ふた味も違う内容に、ワインの楽しさを実感していただけるはずです」


「バイブル」はテーマごとに十数ページが届けられ、1年で300ページを超える。

1年購読することで300ページを超えるという「バイブル」は、佐々木氏を中心に商品企画チームのメンバーが製作。今後もさらなるブラッシュアップが予定されているというから、ますます長編化していくことになりそうだ。その豊富な知識はワイン好きにとってまさにバイブルとして、いつも手元に置いておきたい大切な存在となるだろう。


「バイブル」制作のコアメンバー。商品企画チームにはソムリエやワインエキスパート、WSET Lv.3などの有資格者であり、「ホームワイン」の構想に共感した生粋のワイン好きが集う。

現在は主な顧客に弁護士、医師、経営者、研究者、エンジニアなど知的好奇心に富んだ層をもち、継続率も月平均96%と大変好調なすべりだし。この10月には創業から1年を迎える「ホームワイン」。23年1月には、さらに学びの内容を深く、グレードの高いワインをセレクトした「ホームワインプロ」をローンチさせる予定だ。「ホームワイン」で味わいの違いを感じ、体系としての知識を得たとき、ワインの世界はぐっと広がる。その門戸は今、かつてないほど広く開かれている。


佐々木氏(左)と岡前氏(右)のコンビネーションにより、「ホームワイン」が理想のワインスクールとして具現化した。

ホームワイン公式ページ
https://homewine.jp/

ホームワイン購入ページ
https://shop.homewine.jp/lp?u=shop_lp


佐々木健太(ささき・けんた)◎北海道江別市出身。 21歳でソムリエ資格取得後、渡仏。 南フランス・ニースにあるミシュラン一つ星のレストラン「Keisuke Matsushima」にて一年間研鑽を積む。 帰国後、北海道代表として当時最年少で全日本最優秀ソムリエコンクールに出場。「フォーシーズンズホテル丸の内東京」や人気レストランで経験を積んだのち、ワインスクール講師として多くのソムリエを輩出する。その豊かな知識と明快な語り口から自身のYouTubeチャンネル「ソムリエ佐々木」も人気。

Promoted by WINE TRAIL / Text by Miyako Akiyama / Photographs by Yuji Kanno

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