チェス世界王者マグヌス・カールセンがハンス・ニーマンの不正を告発

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現役チェス世界チャンピオンのマグヌス・カールセンが、グランドマスターであるハンス・ニーマンの不正を9月26日に発表した声明で告発した。カールソンは、チェス界でこの数週間憶測を呼んでいる19歳の不正行為を初めて明確に批判した。

これまでカールセンは、この不正疑惑について謎めいたSNS投稿で言及しただけだったが、26日の声明では、ニーマンが「もっと多く、本人が認めたより最近にも、不正をしている」と述べた。9月初旬に行われたSinquefield Cup(シンクフィールド・カップ)で2人が対局したとき、カールセンは驚きの番狂わせで敗れた。カールセンは、ニーマンがゲームの重大な場面で「緊張も集中もしていなかった」にもかかわらず「ごく限られたプレイヤーしか指せない」手でカールセンを破ったと指摘した。

カールセンは大会主催者に対し、セキュリティを改善し、(オンラインではない)対面対局における不正検出方法を強化するよう要請し、チェスでの不正は「重大問題でありゲームの存在を脅かすものだ」と語った。

カールセンは、公然の場で自分がいえることは限られている、なぜなら自由に話す明確な許可をニールセンから得ていないからだと話した。

ニーマンはフォーブスのコメント要求に対してすぐに応じなかった。

チェスファンの間では、ニーマンがどうやって対面対局でバレることなく不正ができたのかについて、さまざまな憶測が飛び交っている。カールセンのオープニング・ムーブ(初手)が漏洩していたと疑う向きもあるがニーマンはこれを否定し「驚くべき奇跡によって」カールセンの初手を正しく推理したと語った。ほかに、ニーマンが小型の振動デバイスを隠し持って、第3者から次に指す手の信号を受信していたという推測もある。

不正疑惑がチェス界に広まったのは、9月5日にセントルイスで行われたシンクフィールド・カップでニーマン(参加者の中で最低ランク)がカールセンを第3ラウンドで破り、チェス世界チャンピオンに2年以上ぶりに土をつけてからのことだ。カールセンは敗戦後に大会を棄権し、ポルトガルのサッカー指導者ジョゼ・モウリーニョが「私が話せば大きな問題になる」と話した動画をオンラインで共有した。それは2020年に疑惑の判定について彼が受けたインタビューでの発言だった。

チェス界の多くの人々は、その動画をニーマンに対する告発と解釈した。先週、オンラインで行われたJulius Baer Generation Cup(ジュリアス・ベア・ジェネレーション・カップ)の予選でカールセンとニーマンが大注目の再戦に臨んだとき、緊張は頂点に達した。カールセンはわずか1手指した後、突然投了し、ウェブカムを切断した。シンクフィールド・カップの後、ニーマンは何年も前に何回かオンラインで不正したことがあることを認めたが、カールセンとの対面対局における不正は否定した。世界最大のオンライン・チェス・プラットフォームであるChess.comはニーマンを除名し、オンライン・ゲームにおける不正行為に関するニーマンの発言と矛盾すると同社が認めた証拠を見つけたためとしている。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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