未だ現金決済が主流の日本社会において、キャッシュレス化を妨げている要因は何なのか。世界経済フォーラム(WEF)のアジェンダからご紹介します。
日本政府は、給与をデジタルマネーで受け取る制度を2023年春にも導入する準備を進めています。企業が、銀行口座を介さずスマートフォンの決済アプリや電子マネーを利用して、労働者に給与振り込みができるこの制度を推進することで、外国人労働者の受け入れや金融サービス市場の拡大、規制緩和といった複合的な課題の解消と成長促進を図ることが期待されています。
しかし、大手法人向け統合人事システムの開発を行うワークス・ヒューマン・インテリジェンス社が247法人を対象に行った調査によると、「給与デジタル払い」の導入を、検討中もしくは検討予定であるとした企業は30%に満たず、70%の以上の企業が、検討の余地も利用する予定もないと回答。
その理由に、システムコストと運用コスト、そして、運用工数の増大が障壁となっていることが分かりました。
給与支払いにかかる事務手数料の削減や、銀行口座の開設へのハードルが高い外国人労働者への利便性の向上に加えて、従業員の給与受け取り手段の多様性への対応が実現することで、QRコード決済や電子マネー決済の利用によるキャッシュバックやポイント還元といった特典を、企業が福利厚生の一環として間接的に提供できるなど、デジタルマネーによる給与払いのメリットは大きい一方で、コスト面やリスク面で考慮すべき点が多いという理由から、実現に向けてすぐに動き出せる段階にない企業が大半である現状が浮き彫りになりました。
経済産業省は、日本のキャッシュレス化の方向性や方策案を示す「キャッシュレス・ビジョン」を2018年に策定し、大阪万博が開催される2025年までに、キャッシュレス決済比率を40%に引き上げることを目標に、キャッシュレス化への取り組みを推進してきました。
将来的にはその比率を世界最高水準の80%まで上昇させることを目指しています。その目的は、人手不足や地域活性化、生産性向上などの課題解決へつなげていくことにもあります。