英国の住宅危機 新興「不動産テック」にできることは?

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英国では、多くの人が生活できないほど物価が上昇している。洪水や干ばつ、サプライチェーンの破綻やウクライナ戦争などの影響で高騰しつつあるのは、食費や光熱費だけではない。住居もその影響を受け、多くの若者にとってアパートや小さな一軒家の購入は夢のまた夢となっている。残る選択肢はローンが必要ない賃貸物件だが、こちらも価格が上がっている。

特に若者にとって住宅コストが上がっている理由には多くのものがある。最もよく言われるのが需要と供給の不一致で、確かに英国では十分な数の家が建築されていないし、改築さえ十分に行われていない。一部の識者は、理由として現在の低金利も指摘するだろう。ローンの返済額が安くなると、借り手の実質的な購買力は上がるが、供給が限られた市場では価格の上昇を招く。

また、収入が物価の上昇に追いついていないこともある。平均以上の収入がある人でさえ、住宅購入に必要な額のローンが組めない状態にあるのだ。英紙オブザーバーは最近の記事で、ジェネレーションZは生涯にわたり満足できる住居を見つけられないかもしれないと指摘した。

不動産テックの登場


これは、プロパティー(不動産)テック分野の起業家にとってはチャンスとなるかもしれない。同分野のベンチャーキャピタル(VC)であるパイ・ラブス(Pi Labs)によると、英国の不動産テック分野へのVC投資は2021年、約16億ポンド(約2500億円)となり、前年の約3億4700万ポンド(約540億円)を大きく上回った。しかし、こうしたスタートアップは、本当に多くの住宅購入者に大きな変化をもたらすのだろうか?

筆者は最近、プロパティーテック企業のプロポチュニティー(Proportunity)から連絡を受けた。同社は、住宅を初めてあるいは2度目に購入する人の頭金をカバーする「エクイティローン」を提供する企業だ。しかし、こうしたサービスは実際どのような影響を生むのだろう? 一部の人の購買力を上げることで、市場全体の価格上昇につながる恐れはないのか?

筆者はプロポチュニティーの創業者であるバディム・トアデル最高経営責任者(CEO)を取材した。
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編集=遠藤宗生

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