朝日新聞社が9月10、11の両日に行った全国世論調査(電話)では、国葬の賛否は8月の「賛成41%・反対50%」から、「賛成38%・反対56%」と反対が増加している。安倍氏ら自民党議員と世界平和統一家庭連合(旧・統一教会)との関係がクローズアップされたからだろうか。ベテラン議員は「それもあるかもしれないが、そもそもの間違いは(高木毅)国対委員長が安倍昭恵さんにかけた電話だった」と話す。高木氏は国会での追悼演説を誰にするのか、安倍氏の遺族の意向を尋ねた。高木氏は当時、記者団に「何よりも遺族の思いが尊重されるのがふさわしい」と語ったという。
国会の追悼演説を与党主導でやろうとする動きに、野党は反発。引き続いて出てきた国葬を巡る議論も「安倍氏の業績を評価するのかどうか」という問題に焦点が当たった。立憲民主党は党執行部として、共産党や社民党などは党としての欠席をそれぞれ決めた。
このベテラン議員が「国葬」を主張したのは、「民主主義の価値を守るための場」にしたい思惑からだったという。「日本は、自ら勝ち取った歴史がない民主主義に対する意識が薄い。安倍氏は選挙運動という民主主義の根幹をなす場で亡くなった。国葬で与野党ともに一致して民主主義の尊さを確認したかった」と話す。「国会は独立した機関であるべきだ。国会の追悼演説は、最初から野党に任せるべきだった。遺族に意向を聞くなんて、国会の行事と葬式を混同している。それもこれも、民主主義に対する意識が低いからだ」と憤慨する。
「今の議員の多くは、選挙で勝てるかどうか、自分が大臣になれるかどうかにばかり頭が行く。だから、国葬を安倍氏の業績をアピールする場にしようと考える。当然、世論は分裂する。世論や野党から、国葬反対だと言われると、(自民党の党利党略だという)自分の意図が見抜かれるのが嫌だから、(反対する人々に)黙って弔意を示せないのかと逆ギレする」
岸田内閣の支持率は国葬の強行もあり、低落傾向が続く。支持率は30%台後半くらいまで下がっている。自民党内の大半は今、来春の統一地方選で勝利できるかどうかに関心が集まっている。地元の選挙区の地方議員らの間で「岸田首相では戦えない」という声が高まれば、政局になっていくという見立てだ。このベテラン議員はこう嘆いた。「本当は、岸田首相が(次の国政選挙までの)だ。黄金の3年間を有効に使う姿勢を見せるかどうかで判断すべきだろう。目先の選挙しか考えない議員が増えすぎた」
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