海産物に関して言えば、乱獲を防ぐための国際的な規制や各国による規制が実施されていて、そうした規制は、個体群を評価するためのソナーや、同じ魚種を回遊場所や成長段階の違いなどで分けた「系群」のDNA分析による追跡といった手法を活用することで、ますます精緻なものになってきている。
養殖魚でなく天然魚の場合、その「獲り方」も問題になる。とりわけ重要なのは、その漁法によって、狙った魚以外の魚も混じって獲ってしまう「混獲」が起こっていないかという点だ。混獲される魚は、数は多く人間にとってあまり価値のない種のこともあれば(この場合、そのまま海に返されるのが普通だ)、もっと珍しく高値で売れるような種のこともある。残念ながら、サメや亀などの有益種がかかってしまうこともある。
混獲が起こりやすい代表的な漁獲法はふたつある。ひとつは巻き網だ。巻き網漁では魚群収集装置(FAD)を海中に設置するが、そこに狙った種類以外の魚なども集まってしまい、網で囲んで巻き上げた際にそれらも一緒にかかってしまう。
もうひとつは延縄(はえなわ)で、1本の長い「幹縄」を張り、そこから垂らした多数の「枝縄」の先の針につけた餌で魚を獲る方法だ。こちらは対象をある程度は選択できるものの限界があり、一般に漁獲全体の8〜20%が混獲分になるとされる。
こうしたなか、混獲が非常に少ない方法で原料のマグロを調達してツナブランドを築いたのが、ワイルド・プラネット・フーズ社だ。
創業者のビル・カーバロは、すでに海産物業に携わっていた2001年、カリフォルニア州のモントレーベイ水族館で、海が限界に達しているというテーマの展示を目にして衝撃を受ける。それをきっかけに、海洋環境の破壊を最小限に食い止め、将来世代のために海洋資源を守る方向へ会社を進めることを決意したという。
そこで同社が探し始めたのが、一本釣りで魚を獲る「職人的」漁師たちだった。一本釣り漁では、対象がマグロならマグロの漁場に船を走らせ、そこにマグロの好物である生きたカタクチイワシを投げ込む。そうして集まってきたマグロを漁師たちがルアーを使って1匹ずつ釣り上げていく。この漁法は選択性が非常に高く、年に釣り上げる1万3000〜5000匹ほどのうち混獲されるのはわずか4〜5匹だという。