医学誌「JAMAニューロロジー」に掲載された査読済み論文によると、天然痘ウイルスなどサル痘ウイルスと近縁関係にあるウイルスへの感染では、合併症として神経痛や発作、脳炎のほか、不安やうつといった気分障害を発症する例が多数報告されている。サル痘の今回の流行ではこれまで重大な神経疾患の報告例は少ないものの、同様の合併症が予想されるという。
とくに、一部のエイズ患者など免疫機能に障害のある人がサル痘ウイルスに感染すると、ウイルスが体内に長くとどまり神経系を侵しやすくなる可能性があるとしている。
感染拡大を抑えるために多くの人がサル痘に対するワクチンの接種を受けているが、研究チームはワクチン接種による神経疾患にも注意を払う必要があると指摘している。かつて天然痘に対して使われ、サル痘にも使用できる旧式ワクチンは、免疫反応を引き起こすのにサル痘ウイルスと近縁の牛痘ウイルスを用いており、重症化するリスクもある副反応が数多く記録に残っているという。
米国の接種キャンペーンで使われている「ジニアス」ワクチンは不活化したウイルスを使っており、以前のワクチンより安全性は高くなっている。それでも研究チームは、臨床医らは副反応がみられないか経過をしっかり観察すべきだと注意を促している。
米疾病対策センター(CDC)によれば、サル痘の今回の流行では9月14日現在、世界全体で6万2406人の感染が確認されており、うち3分の1強の約2万4000人が米国で報告されている。ワクチン接種や行動変容との因果関係は不明だが、ここへきて米国や欧州での感染者数は減少傾向にある。
(forbes.com 原文)