ビジネス

2022.10.02 17:00

ロングヒット、ティファニー発マナー本から学ぶ「一流のビジネス会食ルール」


一流のマナーは「互いを愉快にさせる」


私たちは、マナーについて細かく考えすぎてしまう傾向がある。礼儀作法を重んじるあまり、その他の振る舞い……食事を味わうこと、楽しくコミュニケーションをとること……を疎かにしてしまうのだ。

ずらりと用意された銀食器や色とりどりの料理を前にすると、どうしても圧倒されてしまう。正しい順序や、やってはいけないことに強く思いを馳せるのも致し方ない。ただ、そればかりに気を取られて同席する人との会話が弾まず、気まずい空気を作るようでは本末転倒である。まして相手がビジネスパートナーだとしたら強烈なマイナスイメージを与えてしまうだろう。

高級レストランで見事な立ち振る舞いを見せる、素敵な紳士淑女がいる。その人は単にマナーを、法律のように遵守しているだけで素敵なのだろうか。そうではなく、マナーを身体に馴染ませていてわざとらしさがなく、自然体に見えるからこそ素敵なのではないだろうか。

本書が提案するマナーとは堅苦しく、通り一遍の、興を削ぐものではない。あくまでも自然で、気軽で、心地よい時間を過ごすためのものだ(そのようなメッセージは、イラストや文章の軽妙な雰囲気からも十分に感じ取れるはずである)。それを強調するかのように、本書は以下の文面で締めくくられている。

「あなたが列席しているのは、みんなを楽しくするためです。愉快にふるまって、あなたの役割を果たしてください。陰気は御法度です」

最低限のマナーを学ぶのは当然必要である。しかし、マナーに溺れてしまうのも考えものだ。食事、とりわけフルコースともなれば楽しむことこそが最も重要なマナーだろう。そのためにはまず、不要な緊張を取り払って自然体で臨まなければならない。

世界的なロングセラーマナー本である本書が教えてくれるのは「飾り気がない」「楽しい人」こそが最も魅力的だ、ということである。ナイフやフォークの順序を間違えてしまうなど、思わぬ失敗をしても決して慌てたり不自然に取り繕ったりしない……。それこそが、ビジネスパートナーに求められる標準的な条件なのだろう。

本書が教えてくれるテーブルマナーは、相手を不快にさせないというよりも、互いを愉快にさせる基本なのだ。そしてそれは、高級レストランのディナーだけでなく、様々な場面で応用できるはずである。

文=松尾優人 編集=石井節子

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