ビジネス

2022.09.26

ターゲットは「醤油を使わない」人たち。日本文化の海外展開のカギとは

suzusanCEO / クリエイティブディレクター 村瀬弘行(左)とKitchen & Companyの中道大輔(右)

日本の企業が世界に出るときに足りないものは何か。そのひとつが“クリエイティビティ”だとしたら、どうしたら乗り越えていけるのか。

Kitchen & Companyの中道大輔がナビゲートするPodcast「VISION TO THE FUTURE」とForbes JAPANがコラボレート。国内外で活躍する“視点”のあるゲストとともに、考え、発信していく。

9月19日配信は、愛知県名古屋市の有松に400年以上伝わる「有松鳴海絞り」という絞り染めの伝統技術を生かし、ファッションからインテリアまで幅広く手掛けるブランド「suzusan」のCEO兼クリエイティブディレクターである村瀬弘行がゲスト。日本文化の海外展開や「suzusan」の今後のビジョンなどを聞いた。



中道:前回に引き続き、「suzusan」のCEO兼クリエイティブディレクターである村瀬弘行さんをお迎えしてお届けします。

村瀬さんは、おそらく毎日を真摯に、一歩一歩前へ踏み出していった結果が今に繋がっていると思います。立ち止まったり、何かが起こるのを待つのではなく、自分からアクション起こされてきましたよね。

特に、なくなってしまう可能性のあった家業の文化や技術を、自分で何かできないかとブランドを立ち上げたことは、僕がこの番組をはじめた理由にも通じますし、自分自身の会社で目指しているところでもあります。

日本には、消えてしまいそうな文化がたくさんある一方で、それらは海外からすると価値があると映る場合は少なくありません。僕としては、それらを伝えていくことで、日本で携わる人々を助け、海外の人々も喜ばせることができると考えています。

それだけに大いに共感したわけですが、村瀬さんは海外から見た日本について、どのように考えていますか。

村瀬:文化は、時代の流れの中で本当に簡単になくなると思います。例えば、フランスのリヨンはかつてシルクの一大産地で、中世から何世紀にもわたりヨーロッパ全土にビジネスを広げていました。

ところが、現在はほぼビジネスが行われていない状態です。今の日本でいうと、トヨタがなくなるほどのインパクトと例えられるかも知れません。

かつて有松で絞りが栄えた理由の一つに、江戸幕府による専売制があり、約250年にわたって、絞りは有松でしか作れませんでした。世界的で見ても250年間以上にわたって戦争がなかった国は日本くらいで、実は江戸時代に花咲いた日本の文化は多くあります。日本に手仕事や産業が根付いたのも、江戸時代の影響が大きいと言えます。

絞りに似た技術は、インドやアフリカ、南米にも見られます。しかし、それらは地域に一つか二つほどしか種類がないのに対し、有松は歩いて15分ほどのエリアに200種類以上もあります。その各家庭ごとの分業で成り立った多様性こそ産業が豊かに育った結果と言えますが、かつては1万人ほどもいた職人が、今では高齢化の影響もあって200人以下ほどしかいません。

なくなりそうな文化を美術館に展示するなどで保護するというのもありますが、僕には、使われる産業として残したいという思いがありました。そこで整理するために絞りの文化をマテリアル、技法、用途にわけました。
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文=小谷紘友 編集=鈴木奈央

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