男性もなり得る「産後うつ」 予防のためにできること

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次に、大きな環境変化による不安と孤独、自信喪失と孤立感の深まりです。こうした状態に産後は陥りやすいため、うつ病になりやすいんです。産後は赤ちゃんとの新しい生活が始まって、どんな人であっても環境が大きく変化します。

初めての育児に不安と孤独を感じて、「親なんだから」と気負い、思うようにいかないことで自信をなくし、サポートが得られず孤立してしまう。そこから「すべてができていない」と思い、「この状態がずっと続く」と絶望し、「わたしが悪い」と自分を責めて、うつ状態になっていきます。



男性も産後うつになる


──第一子を出産したとき、目の前にいるふにゃふにゃの赤子のいのちを守らなければ!と使命感に駆られながらも、これでいいのか不安で、夜泣きと授乳で十分に眠れない日が続き、身体的にも精神的にも追い詰められて、涙が出てきたことがありました。

産後は誰しも環境が変化するし、初めての子育てにプレッシャーや不安を感じますよね。よく産後うつは女性ホルモンが関係していると言われますが、育児をしている男性も産後うつになことがわかっているんです。

厚労省の国民生活基礎調査(2016年)をベースに、産後1歳未満の子どもがいるふたり親家庭3514世帯を解析したところ、お父さんの11.0%に精神的な不調のリスクがあるとされ、お母さん(10.8%)とほぼ同水準であることが判明しました(国立成育医療研究センター研究所 政策科学研究政策開発研究室室長、竹原健二氏らの研究より)。つまり、女性ホルモンの分泌量の変化に関係なく、男性も女性も、産後は大きな環境変化が要因で、うつ病になるリスクが高まるんです。

──へえ、男性も産後うつになるとは!これからもっと男性の育休取得が進んでいったら、より男性の産後うつも増えていきそうですね。とはいえ、産後の男女には身体的な面での負担には違いがありますよね?

おっしゃる通り男女の違いは、身体的な負担で、それが精神的負担にもつながっていくことですね。よく妊婦さんには、妊娠から出産まで10カ月かけて身体は変化していったので、同じ状況に戻るまでには同じだけ時間がかかりますよ、と言っています。産んで1カ月、2カ月で身体は妊娠前と同じような本調子にはなりません。体力が落ちて疲れやすかったり、分娩方法によっては会陰や腹部の傷口が痛むこともあるでしょう。

赤ちゃんのお世話によって、身体に変化のない男性でさえ産後うつになるくらい大きな環境変化があるんですから、心身がままならない状況の女性はよりそのリスクが高くなりますよね。ある意味みんななってもおかしくない。実際に7〜8割くらいの女性が産後うつの手前の状況にあるとも言われています。
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文=徳 瑠里香 イラスト=遠藤光太

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