「各州の中絶への制限が施設の立地決定に影響」米製造業CEOの5人に1人

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米インディアナ州の大企業2社は2022年8月に、州議会が人工妊娠中絶をほぼ全面的に禁止する案を可決した後、州内での施設拡張について再考すると明らかにした。新しい世論調査によると、米国内におけるこうした動きはこの2社に限ったことではない。

1876年からインディアナ州を拠点とし、州都インディアナポリスに本社を置く製薬大手Eli Lilly(イーライリリー)は「インディアナ州外で雇用を増やす計画を立てざるを得ないだろう」と述べた。

同州コロンバスを拠点とするエンジンメーカーのCummins(カミンズ)は「この州法が社員にどのような影響を与えるのか、インディアナ州に多様な労働力を引き付けて維持する能力を妨げるのではないかと深く懸念している」と述べた。立地決定の際にはこの点を考慮するという。両社はそれぞれ、州内で約1万人を雇用している。

米国の製造業の最高経営責任者(CEO)の5人に1人は2社と同意見だ。世論調査会社Zogby(ゾグビー)が実施したフォーブスの調査によると、6月に最高裁が人工妊娠中絶を憲法上の権利と認める「ロー対ウェイド判決」を覆す判断を下した後、製造業のCEOらは中絶を制限する州法に基づいて会社の施設をどこに設置するか戦略を変えたという。

2022年8月下旬に製造業経営者150人を対象に行われたこの調査では、19%の企業が新しい人工妊娠中絶法のために計画を変更したことがわかった。そのうちのおよそ3分の1(34.5%)は既存の施設を移転し、もう3分の1(34.5%)は新しい施設の設置場所に他の州を選び、残る3分の1(31%)は現在戦略をどう変更するか議論しているところだった。この調査の誤差の範囲は8.2%だ。

匿名でコメントを求めたところ、あるCEOは自社施設の立地場所として中絶反対の州は対象外としていると回答。「女性の選択を制限する州で倉庫を買うことを検討したが、すべて断った。共和党の知事がいる州では操業しない」とこのCEOは述べた。
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翻訳=溝口慈子

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