新たな規制で、メンソールタバコの禁止をめざすバイデン政権

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ジョー・バイデン大統領の政権は、メンソールの香りがついた紙巻きタバコ、いわゆる「メンソールタバコ」の禁止に向けて動いている。

メンソールタバコは、毎年米国で販売される紙巻きタバコ全体の3分の1超を占めており、従来はアフリカ系米国人に向けた売り込みがさかんにおこなわれてきた。米食品医薬品局(FDA)は、メンソールタバコが禁止されるようになれば、9万2000~23万8000人のアフリカ系米国人の命を救えるだろうと明言している。

FDAは、メンソールタバコだけでなく、すべてのフレーバータバコの米国内での販売を禁止しようとしている。「ウォール・ストリート・ジャーナル」によれば、2020年の米国では、アフリカ系の喫煙者の81%、ヒスパニック系の喫煙者の51%がメンソールタバコを吸っていた。それに対して、白人の喫煙者では、その割合は30%だ。

FDAは2013年に、メンソールタバコは通常のタバコよりもやめるのが難しく、健康上のリスクが大きくなる可能性があるとの見解を示していた。米国では、喫煙関連死が毎年48万人を超える。また、喫煙に関係した疾患で死亡するアフリカ系米国人は、毎年4万5000人前後にのぼる。

金儲けへの依存


メンソールの香りがついたニコチンへの依存はさておき、金儲けへの依存は、それよりもさらにやめるのが難しい。たとえば、ロンドンに本社を置くタバコ製造・販売会社、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT) は、2017年に500億ドル近くを費やしてレイノルズ・アメリカンを買収した。同社は、米国トップのメンソールタバコ・ブランド「ニューポート」を製造する会社だ。モルガン・スタンレーによれば、メンソールタバコは、BTAの米国における全利益のおよそ30%を占めているという。

BATの株価は、過去1年で8.7%上昇しているが、メンソールタバコの販売をやめれば、そうした企業の収益は大きな打撃を受けることになるだろう。

メンソールタバコの喫煙者は、平均よりも若い傾向があり、したがって一生における喫煙期間が長くなる可能性がある、とウォール・ストリート・ジャーナルは報道している。10代の若者は、ニコチン依存症になるリスクにさらされている。「タバコ・フリー・キッズ」の報告によれば、2019年には、アフリカ系米国人で3.2%、白人で9.9%、ヒスパニック系で7.2%の高校生が喫煙していた。

咳どめシロップのような香りのついたメンソールタバコは、マイノリティのティーンエイジャーに人気があり、通常は比較的吸いやすく、やめるのが難しいと「全米アフリカ系米国人タバコ防止ネットワーク(National African-American Tobaccom Prevention Network:NAATPN) 」は指摘している。

メンソールタバコの禁止は、メンソール電子タバコには適用されないものと見られる。また、少なくとも2年間は発効せず、さらに先になる可能性もある。FDAは、早ければ2023年にも最終的な規制案を発表する。

forbes.com 原文

翻訳=梅田智世/ガリレオ

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