バイオテクノロジー産業が米FRBによるインフレ対策の最初の犠牲に

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米連邦準備制度理事会(FRB)の0.75%の利上げがバイオテクノロジー産業に、ひいては国の健全性におよぼす影響について真剣に考える必要がある。過去30年間で最も急速にインフレが進行しており、利上げがこの経済的困難に対処するための唯一の手段であることを考えると、意図しない結果をもたらすことは確実だ。

金利とインフレ率が上昇を続け「より安全」な固定利回り証券と資本市場の大きな変動に直面しており、投資家は当然のことながら警戒を強めている。したがって、バイオテクノロジー企業のようなリスクの高い長期成長企業への投資は減少せざるを得ず、この業界の継続的な成長は弱々しいものになる。

年間の利上げ幅は3.25〜3.5%になる見込みだ。2023年末にはさらに上昇し、3.75〜4%になると予測されている。このような利上げは、バイオテクノロジー部門が存続するために資金調達する能力をさらに損ない、これまでで最も大きな難題となる可能性がある。では、バイオテクノロジー部門が行き詰まったらどうなるのか。

1980〜2021年にバイオテクノロジー企業635社の新規株式公開(IPO)があったことを考えてみよう。このうち、2020年と2021年に上場したのは173社(27%超)だ。これまでで最多で、そうした企業はすべてバイオテクノロジーの医薬品プログラムの90%が失敗するという歴史を念頭に今では少なくなってきている真剣な投資家からの資金援助を必要としていた。

これらのバイオテクノロジースタートアップの多くは、科学には長けているがビジネスの経験が乏しい個人が率いており、その財務モデルも経験したことのない逆風にさらされている。投資銀行が規模を縮小し、スタッフを削減する中で、スタートアップは資金調達をどこに頼れるだろうか。

バイオテクノロジーを専門とするプライベートエクイティファンドや投資会社は、大きな損失を被る中、承認や市場投入が近い後期開発段階にある医薬品を持つ企業への投資にますます力を注ぐようになっている。市場が不確実性を嫌うのはまったくその通りであり、このためバイオテクノロジーのIPOは資金調達の見通しが立たないままだ。大手製薬会社でさえ新薬開発への関心を失いつつあり、代わりにコスト削減とベストセラーとなっている医薬品の売上増に注力している。
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翻訳=溝口慈子

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