僕が乗った最上級グレード「G e-4ORCE」は100%モータードライブ。つまり、ガソリンエンジンの役割は発電であり駆動には関係ない。フロントには最高出力204psの、リアには136psの駆動用モーターを搭載する。4WDモデルにはブレーキとモーターによって各輪の駆動力を制御する「e-4ORCE」が搭載される、実に力強い加速感。
フロントモーターだけでもBEVの「アリアB6」と同じ204PSだから力強いのは当然ながら、モーターによる静かな走行感覚よりもまず特筆すべきはそのエンジンである。KR15DDT型1.5リッター3気筒直噴ターボエンジンは、VC(可変圧縮比)ターボという通称のとおり、ピストンとクランクシャフトの間に複雑なリンク機構を設けて圧縮比を変化させ(8:1~14:1)高効率を追求したエンジンであり、日産が長年開発してきた自慢のユニットだ。
今回の試乗会会場で大変興味深いところは、日産のスタッフがエンジン技術に自信満々で高い誇りをもっていること。エクストレイルが搭載する3気筒の1.5リッターVCターボのエンジンは、駆動には無関係なのに、だ。
このエンジンは発電機だけど、やはり、発電機の重要性をつくづく感じた。スペックは最高出力144ps、最大トルク250Nmというものだが、巡航時は当然その存在を感じさせないほど静かでスムーズであり、さらにベタ踏みしても、聞き慣れた格好いいエンジン音は気持ちよかった。
しかも、モーターの加速感は瞬間的でパワーに溢れているし、ステアリングも手応えがあって、ライン通りにコーナーをトレースしてくれる。しかも、何よりも乗り心地はしなやかで直進性は優れている。どの路面でもドライバーに自信を与える新エクストレイルの完成度は高いと思った。
今はEVやSUVのブームで、どんどん売れている。しかし、EVが普及しても、やはりエクストレイルのe-POWERなら、ピュアEVに比べて電欠や充電の心配はないということで、日産の最新SUVに魅力を感じる人は増えるに違いない。しかも、走りや静粛性の良さ、内装の高級感などを含めた最上級グレードの「G e-4ORCE」の449万円はリーズナブル。しかも、エントリーレベルの「S e-4ORCE」なら、347万円から、と聞くと、さらにお得な感じがする。また、同社はe-POWERなので、補助金は適用されないことを言っておこう。
国際モータージャーナリスト、ピーター・ライオンが語るクルマの話
「ライオンのひと吠え」 過去記事はこちら>>