画像生成AIのMidjourney創業者が語る「AIアートが起こす混乱と未来」

AIが生成した画像(Getty Images)


アーティストを切り捨てようとする人も出てくるとは思います。そうした人は似たようなものをより安く作ろうとするでしょうけど、市場で失敗すると思います。これからはより質の高い、より創造的な、はるかに洗練された、多様で深みのあるコンテンツが市場に出てくると思います。そして、実際にアーティストのようにツールを使いこなせる人たちが勝ち組になるのです。

これらの技術は、映像メディアに対するより深い評価とリテラシーを実際に生み出すものなのです。そしてそうしたレベルの制作能力を、はるかに凌駕する要求も生じるかもしれません。そうなれば、実際にアーティストの給料を上げることになるかもしれませんね。変な話かもしれませんが、そういうことが起きるでしょう。品質と多様性の両方に対する要求のペースが高まることで、すばらしい、予想外のプロジェクトの誕生につながることもあるでしょう。

──多くの学生が多額の借金を背負って美術学校を卒業し、芸能プロダクション、テレビゲーム制作、商業美術などの比較的高収入の仕事をあてにしてきました。AIによる「テキストからイメージへの変換プラットフォーム」の登場は、彼らの将来にどのような影響を与えるのでしょうか?

コストを削減しようとする人もいれば、野心を膨らませようとする人もいると思います。野望を膨らませる人は相変わらず同じ給料を払い続けるだろうし、コスト削減をしようとする人は失敗すると思うのです。

──AIは、コールセンターや空港の手荷物検査など、人があまりやりたがらない仕事に大規模に使われるのが一般的です。そして、人々をよりやりがいのある、よりおもしろい仕事をすることができるよう解放できるというのがAIが提案している価値です。でも、アートの仕事はやりがいがあっておもしろいものです。こういう仕事に就くために、人は一生働き、技術を身につけて行きます。なぜそのようなレベルの世界に対して、その技術をビジネスの焦点や優先事項として向けて行くのでしょうか?

個人的には、そこに向かってはいません。私の製品は、プロのアーティスト向けに作られたものではありません。まあ気に入って使ってもらえるなら、それはそれでうれしいですけど。私の製品は……そうですね、たとえばこんな人のために作られています。あるとき私のところに香港在住のある女性が連絡してきて、こう言ってくれたことがあるのです「香港では親が子どもに絶対なってほしくない職業はアーティストなんです。なので私は今銀行員をやっています。銀行員として充実した生活を送っています。でも、Midjourneyが手に入って、実際になりたかった自分になれる経験を味わい始められたんです」と。あるいは、トラック用サービスエリアで、純粋に遊びとして、かっこいい日本風の野球カードを自作している男性もいます。Midjourneyはこのような人たちのために作られたのです。他の人たち同様に、彼らにはいままでやりたくてもその機会が巡って来なかったのです。
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翻訳=酒匂寛

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