私たちが目にしているのは、単調な文章ばかりではない。世の中には秘めたる文才の持ち主が多くいて、彼らはネットの至るところを駆使して「文学」と呼んで差し支えないような作品を書き下ろしているのだ。
「58万円の純金製サイコロ」に投稿されたあるレビュー
代表的な空間となっているのがアマゾンのレビュー欄である。通常、レビューとして投稿されるのはあくまでも商品そのものの感想や問題点だ。それ以上の要素は求められないし、書く義務もない。しかし中には発想の転換、類い希なる文章力、思わず共感させる説得力を用いて異彩を放つレビューを投稿する人がいる。こうしたレビューは、一部の人々のあいだで「アマゾンレビュー文学」と名付けられている。
アマゾンレビュー文学は数行で終わる短編から、読み終えるのに10分はかかりそうな長編まで多岐にわたり、あらゆる商品で散見される。
例えば以下のような作品はいかがだろう。これは『十寿 純金 K24 未来を占うサイコロR25』という58万円の純金製サイコロに投稿されたレビューである。
『安かったので、5個、人生ゲーム用に購入しましたが、そもそも人生ゲームにはルーレットが付いてるので不必要でした。』
58万円のサイコロに「安かったので」と見得を切るところから始まる一文の物語は、結果的に「不必要でした」という脱力感に満ちたオチを迎える。歯切れ良く、それでいて洒落っ気のある作品になっているのではないだろうか。
このレビューのように、短編の場合はユーモアが込められた作品が多い。同様の作品は主に、ニッチかつ高額な商品のレビュー欄で頻繁に見当たるというのが筆者の感触である。探す際の参考になれば幸いだ。