──今はオフラインの比率が増えていますか?
原田:じわじわと戻ってきています。エンターテイメントのイベントはもちろん、料理教室やワインの試飲会など、リアルで集わなければならないイベントはたくさんありますから。工夫すればオンラインでもできますけど、その場で一緒に盛り上がる方が楽しいに決まってますよね。
藤田:リアルのイベントや会議で「たまたま」出会った人との交友関係が新しいビジネスを生んだり採用に繋がったり。そういう偶然の幸運な出会い、「セレンディピティ」の可能性は、オンラインがまだ埋められていないところだと思います。
一方で、情報の取得という面では居場所を問わずに参加できるオンラインイベントが有利ですよね。今後は目的ごとに、オンラインとオフラインが使い分けられていくのではないでしょうか。
藤田祐司取締役CMO(右)
──第2、第3のPeatixが、オフラインイベントの会場での「偶然の出会い」から誕生していくかもしれませんね。コロナ禍の3年間、創業時には想像できなかったであろう事態をくぐり抜けて、イベント開催の方法、イベントに関する概念に、社内で変化はありますか。
岩井:創業当時はまだシステムが整備されていなかったので、人力でカバーしている部分がありました。300人規模の会場で、足りない人手を自社で補うとか、「直接、アナログでお手伝いすること」に必死でした。
そういうところが少しずつテクノロジーで解決できるようになった。そうすると、別の問題に思いを巡らせる余裕が生まれてきます。今は、イベントの後のフォローアップ、たとえば、コミュニティ同士で交流したりメッセージを送り合ったり、といった部分で、プラットフォーマーとしてのわれわれにできること、そこに軸足を移すようになりました。
原田:立ち上げ当時から競合ベンチャー企業は多くありましたが、「コミュニティ支援」を基本ミッションに据えていたのはわれわれだけだった。それこそベゾスの言う「長期的な視点が重要」ではないですが、長期的支援についても、常に「どうするのが正しいか」を判断してきたつもりです。その結果、他の会社とは異なるビジネスモデルで、しっかりとした経営基盤や展望を持って生き残れています。
──他企業とPeatixでは具体的に何が違っていたのでしょうか。
原田:見えている風景がそもそも、少し違っていたと思います。他社はあくまでも「チケット会社」を目指していました。われわれはやりたくないことがはっきりしていて、ひたすら「普通のチケット会社にはなりたくない」と思っていました。「人が集まって交流し、共に行う」コミュニティ活動を支えるツールになることを第一に、ブレずに注力していきたい、と。
われわれの提供するサービスは、手数料が他社よりは少し割高です。その代わり、たとえば過去に参加したイベントつながりで、親和するコミュニティやイベントを推薦するメールが届いたり、イベント情報を閲覧しただけでも、興味の持てるイベントの情報が送られたり。そうやって上質なコミュニティの醸成に貢献できる強みがあります。
われわれ自身も主催者側の一員として、サービスを通してお客様とのコミュニティとつながっている。結果、ファンダム(熱心なファンたち)を築けていると思います。