科学と工学における「代表性」についての『リトル・マーメイド』騒動の教訓

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STEM分野では「代表性」が重要だ。それは、子どもたちが自分自身に対して持っているイメージや、他の人たちが子どもたちに対して持っているイメージを形成するものだからだ。私はキャリアの初期に、最高の気象学者になって、科学者として気象を探求したいと思った。私は不本意ながら指導者の役割を引き受けたが、そうしてよかったと思っている。私の存在は、さまざまなバックグラウンドを持つ子どもたちに、テレビや教科書で見るのとは違った科学者やエンジニアの姿があることを教えている。また、より広範で包括的なメンターが生まれる。

私はあらゆる背景を持つ学生と話をし、指導しているが、アフリカ系アメリカ人や黒人の子どもたちでいっぱいの部屋に入ると、いつもと違う興奮と畏敬の念を覚える。私たちの家族の友人であるターシャ・アレンが、予告編について「娘が予告を見て拍手し始めた! 娘は最初に『彼女はとてもかわいい』といった」とツイートした時、私が彼女がいってることを正確に理解した。娘が子どもの頃に好きだった映画の1つが『The Princess and the Frog(プリンセスと魔法のキス)』だった。娘の心に響いたのは、その代表性だった。

『リトル・マーメイド』の原作はおとぎ話だ。人魚は存在しない。ハンス・クリスチャン・アンデルセンは、自身の文化的、地理的な背景からこの物語を語った。私はアーティストではないが、芸術性や創造性とは、解釈やインスピレーションだと知っている。「スパイダーマン」や「スター・ウォーズ」のキャラクター、そして「ゴジラ」に至るまで、さまざまな解釈を見てきた。このような物語を語るには、さまざまな視点があり、それでいいのだ。

ここで、STEM分野の代表性に話を戻そう。全米科学財団(NSF)が最近発表した報告によると、女性や十分に代表されていないグループの代表性は、人口全体と比較してまだ非常に低いことがわかっている。しかし、報告書は「S&E(科学と工学)の職業に従事するヒスパニックまたはラテンアメリカ人の数は、1995年から2019年の間に6倍になり、黒人またはアフリカ系アメリカ人は3倍になった」と記している。また「2019年までに、S&E関連職業で働く学士号以上の女性の数は、1993年からほぼ3倍になり、2003年からほぼ2倍になった」と報告している。

この数字を広い視野から考えるのは重要だ。私が2013年に米気象学会の会長になったとき、私はその組織の黒人会長の数を倍増させた。というのも、私以前には、私のメンターであるウォーレン・ワシントン博士だけがその役割を担っていたからだ。しかし、前述のNSFの数字は、代表性とメンターの増加が何らかのプラスの効果をもたらしている可能性を反映しているだろう。

E.T.やヨーダは実在しないので、私は彼らの色を知っているとはいえない。リラックスして、子どもたちがこれらの物語のあらゆる解釈を楽しむことができるようにしよう。

forbes.com 原文

翻訳=上西 雄太

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