仮に生産量が突如として回復し始めたとしても、全世界で利用可能な精製能力にはますます制限が増えており、原油生産はその影響を受けることになるだろう。
国際エネルギー・フォーラム(IEF)がS&Pグローバルと共同で行った新たな調査リポートによると、全世界の燃料精製能力は、この2年間で日産380万バレル(bpd)まで落ち込んでいる。
このリポートの概要には、以下のような指摘がある。「利用可能な精製能力を持つのは、主にロシアと中国の2カ国だが、ロシアからの輸出に関しては制裁が、中国に関しては国内政策が障害となり、十分に稼働できない状態だ」
さらにこう記されている。「2023年末までに稼働予定の精製能力は、実質で日産200万バレルに達する。だが、過去の例を見ればわかるように、スケジュールの遅延や運用時の問題点により、増強が思うように進まないこともあり得る。
これらの精製所は、新規に建設される、大規模な燃料主体の精製所としては最後のケースになる可能性が高い。エネルギーシフトにより、今後は、従来型の精錬能力への需要が頭打ちになると考えられるからだ」
このような状況は、欧州に大きな影響を及ぼすだろう。欧州各国の政府は、自らが課した制裁により失ったロシア産エネルギーの穴埋めをするため、新たな原油、石油製品、天然ガスの主要な供給源を確保する取り組みを続けている。
政策や制裁がエネルギー不足を引き起こし、エネルギー不足が価格の上昇をもたらし、価格上昇によりさらにエネルギーが不足する状況に陥っているというのが、筆者たちの認識だ。
需要の高いコモディティに、一連の「上限価格」を課すという欧州の計画は、悪循環に陥り、悪化の一途をたどっている危機のなかで、これらのコモディティの不足を深刻化させるものにしかならないだろう。
西側世界の政治家たちが一歩引いて、自分たちの政策が問題の根源であるという認識に至る日が来ない限り、今の危機が一層悪化していくことは避けられないだろう。
(forbes.com 原文)