経済制裁と政策が、欧州エネルギー危機をさらに悪化させる

Getty Images / NATO summit

欧州連合(EU)を含む欧州各国の政府はいま、経済や人道面で最悪の事態を避けるための窮余の策として、エネルギーのサプライチェーン上のありとあらゆる要素に「上限価格(プライスキャップ)」を課そうと躍起になっている。だが、新たな研究や業界の全体的な傾向を見るかぎり、現在拡大中の危機はさらに悪化しそうだ。

現時点で原油と天然ガスの最大の生産国となっている米国の掘削リグ稼働数は、7月初旬から横ばい状態が続いている。この状況から読み取れるのは、欧州や世界のその他の地域は、米国のシェール業界から早期に追加供給が得られると期待するべきではない、ということだ。

エネルギーサービス企業のベーカー・ヒューズおよび、エネルギー情報企業エンベルス(Enverus)のデータでは、9月第2週に入って、稼働中のリグの数が大幅に減少していることから、少なくとも2023年の掘削予算が使えるようになる同年の初頭までは、リグの稼働数が増加しない可能性が高い。

さらに、その時期になっても、稼働数が減少すると予測するに足る理由は、増えると考える理由と比べて、少なくとも同程度には存在する。

バイデン政権は、米国内で新規採掘を行うための土地のリース契約および掘削活動全般に制約をかける方針を打ち出しており、この取り組みは非常に大きな効果を発揮している。

実際、エネルギー調査会社ライスタッド・エナジーの新たな調査リポートによると、原油およびガスのリース契約を制限するというバイデン政権の方針は全世界に及んでおり、新規区画の掘削権提供および総面積は、20年来の低水準にあるという。

リース契約に関して、調査リポートの執筆者は以下のように書いている。「今年(2022年)に入って現在までに契約が結ばれた面積は32万平方キロメートルと、20年来の低水準にある。

また、今年の全世界のリースラウンド数は44件になるとみられる。これは、2021年より14件少なく、2000年以降では最低の水準だ」
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翻訳=長谷睦/ガリレオ

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