米国GDPの5%を占めるバイオ経済、バイデン政権が成長戦略を策定

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米国のバイオ経済が活況を呈している。現在の米国における市場の価値は推定約1兆ドルとされているが、世界の市場は今後20年で30兆ドルを超える見込みだ。いまや、植物ベースのハンバーガーなどの食品からワクチン、再生可能なバイオプラスチック、コンクリート、衣類、果ては鉱物採掘に利用される微生物まで、ありとあらゆる最新バイオ製品が、続々と市場進出を果たしている。

ホワイトハウスは、好調なバイオ経済を支えるため、「全米バイオテクノロジー・バイオマニュファクチャリング・イニシアチブ」の創設を宣言する大統領令にバイデン大統領が署名することを発表した。

米国の農村部に革新的バイオテクノロジーをもたらす「バイオベルト」を建設し、すべての人が恩恵を得られるバイオ経済を創出する必要があるという議論は、以前からなされてきた。今回の大統領令の発表で、こうしたビジョンが実現に近づいたかたちだ。

バイデン政権は大統領令を通じて、サプライチェーンを強化し、公衆衛生や気候変動の問題に取り組む。連邦政府に対してバイオテクノロジーへの戦略的投資を促し、国内のバイオマニュファクチャリングを強化することで、安定雇用を創出し、安全性が保証された革新的バイオテクノロジーを全米に浸透させるとしている。

米国民向けの新型コロナワクチンの秋季ブースター接種が始まるなか、バイオテクノロジーが経済にもたらす影響は、かつてないほど明確になっている。国民に無償で提供される新型コロナワクチンは、冬季の死者数増加を抑止し、世界経済全体を窮地から救うかもしれない。

しかしワクチンは、バイオテクノロジーによって生まれる製品のほんの一例でしかない。非営利のグローバル政策シンクタンクである米国科学者連盟(FAS)でシニアフェローを務めるマイケル・A・フィッシャー(Michael A. Fisher)は、以下のように述べる。「米国のバイオ経済市場は9500億ドル以上の価値があり、GDPの5%以上を占めている。建設業を上回り、ITセクターと肩を並べる規模だ」

フィッシャーは2022年8月、連邦政府の適切な支援がなければ、米国のバイオ経済はライバルに地位を脅かされるだろうと警鐘を鳴らした。「中国は、21世紀におけるバイオ経済の覇者の座を狙っており、5カ年計画においてバイオ経済の成長を優先課題に掲げている。2016年から2021年7月までのあいだに、中国の上場している生物製剤イノベーション企業の市場価値は、複数の株式市場で約127倍に跳ね上がり、3800億ドルに達した。この市場価値の47%をバイオテクノロジー企業が占めている」
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翻訳=的場知之/ガリレオ

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