独自のポジションを築くマセラティ。期待を裏切らない、説得力のあるSUV

Maserati Levante GT Hybrid

自動車でいいのは、乗り手がブランドのレガシーを大切にするところだ。好例がマセラティ。乗り手は、1914年にボローニャで生まれたスポーツカーであることを常に意識。トライデントと呼ばれる三叉の鉾のエンブレムも誇らしい。

「レヴァンテ」は、マセラティ史上異色のモデルだった。マセラティがSUVを手がけるなんて、以前は想像もできなかった。しかし、2016年に発表されたあと、レヴァンテは着実に市場を拡大してきた。22年には続いて、グレカーレというSUVも誕生した。

レヴァンテが受け入れられたのは、世界的に高級で高性能なSUVという市場が拡大していたためだ。第2次大戦前まではレースで、その後は贅沢なGTカーの市場で、独自のポジションを築いたマセラティへの憧れが後押しした。もちろん、操縦性の高さは言うまでもない。

レヴァンテの魅力が色あせないのは、発表から現在に至るまで、開発の手を休めていないからだ。48ボルトのマイルドハイブリッドシステムをもった「レヴァンテGTハイブリッド」は、21年12月に日本で発売された。運転すると、軽快でスポーティ。期待を裏切らない走りだ。

エンジンは2リッター4気筒で、243kW(330ps)の最高出力と、450Nmの大トルクを発生。素晴らしいのは、大パワーと、ハンドリングとのバランスのよさだ。微妙なアクセルワークにすかさず反応してくれる加速性や、ダイレクトな感覚のステアリングなどが楽しめる。同時に、しなやかな足回りのおかげで、長距離も快適だ。

内装も大きな特徴。素材、質感、色づかいなど、ほかでは得られない意匠である。際立つために、独自の世界観で勝負してきたマセラティだが、いま、ドイツ勢に比肩する走りの実力を誇る。レヴァンテに乗ると、それがインポッシブルドリームでないとすぐわかる。説得力のある製品だ。






Maserati Levante GT Hybrid(写真のモデルはMY22です)

ボディ外寸:全長×全幅×全高=5020×1985×1680mm
駆動形式:1995cc 4気筒(マイルドハイブリッド)
最高出力:243kW(330ps) 最大トルク450Nm
価格:1270万円(車両本体価格)

スポーツGT「MC20 Cielo」が黄金時代を取り戻す


「MMXX: Time To Be Audacious」なるスローガンを掲げて、マセラティは、2020年を「ブランドの新時代」(の幕開け)と定義。このとき、F1ゆずりの燃焼技術を採用した新開発のV6エンジン搭載のスポーツカー「MC20」を発表して、大いに話題を呼んだ。

22年5月には、フルオープンモデル「MC20 Cielo」(cieloは伊語で空の意)を追加発表。格納式グラスルーフには高分子分散型液晶技術が採用され、ボタン一押しにより一瞬でスモークから透明に透過率が変化する。軽量で高剛性で高価な炭素素材のシャシーに、上に跳ね上がるシザーズドアの採用。

高性能で同時に官能的な自動車を作り上げた。「イタリアの自動車づくりの黄金時代を取り戻したい」とはダヴィデ・グラッソCEOの言。レース活動にも言及するなど、ブランド価値をさらに向上させるのに余念がないもよう。

文=Fumio Ogawa 写真=Tsukuru Asada (MILD)編集=Tsuzumi Aoyama

この記事は 「Forbes JAPAN No.097 2022年9月号(2022/7/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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