「貿易・移民政策はどうあるべきか」悪化するロシア経済から米国が学べる教訓

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輸入は不可欠なものだ。米国の議員は通常、貿易の拡大や新たな貿易協定を主張する際に輸出のメリットを引き合いに出す。トランプ政権では輸入品に高い関税をかけることが優先事項となり、バイデン政権はそうした関税をほぼ維持している。経済学者は、輸入は消費者に低価格と多様な商品を提供する一方で、企業には輸出用を含む製品の製造に必要なものを供給するために不可欠だと指摘する。

フィンランド銀行が発表したロシアの対外貿易に関する報告書には「全体として、我々の分析では戦争と制裁のロシア経済への影響が今後数カ月の間にますます大きくなる。最新の予測では2022年と2023年、ロシアのGDP(国内総生産)はおよそ10%減となると見込まれている」とある。

ロシアの輸出収益は石油のおかげで好調だが「工業用のパーツや部品などを含む輸入が崩壊し、ロシアの生産経済と自動車、医薬品、防衛製品の製造能力が打ちのめされている」と米商工会議所の国際政策担当上級副会頭のジョン・マーフィーはインタビューで述べた。こうした事態は国際貿易の利益が輸出で得られるものではないことを示しているとマーフィーは指摘し「輸出と引き換えに得られる有用な輸入品が利益なのだ」と話した。

ロシアの企業や消費者は、輸入がいかに重要で有益なものであるかを身をもって知った。「西側諸国の政府はロシアに販売する前に許可を取得することをあらゆる国内産業に義務付けているが、それが認められることはほとんどない」と英エコノミストは報じている。「この規制はドローンやレーザーなど軍事と商業の両方に使える『二重用途』製品だけでなく、半導体、コンピュータ、ソフトウェア、エネルギー機器といった高度なものも対象にしている。また、化学品や日用品などのローテク製品も対象だ。これは輸入品を必要とする国内の製造業にとっては悪い知らせだ」と指摘する。

エコノミストは、輸入品と高技能労働者が減少したロシアの暗い先行きについて「米国とその同盟国が制裁を続ける限り、ロシアの産業基盤、知的能力、国際的なつながりは弱まり、その未来は生産性の低迷、少ない技術革新、構造的なインフレのいずれかになるだろう。経済学者が即座の破綻を予測したのは間違いだった。その代わりロシアが手に入れたのはどこにも行けない片道切符だ」と書いている。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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