心の健康を腸内微生物で改善 米企業が開発プログラム開始

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世界保健機関(WHO)によると、新型コロナウイルスの流行中には、不安症とうつ病が25%以上増加した。米国では、成人4000万人以上に不安障害がある。だがメンタルヘルス治療の分野ではイノベーションがほとんど起きておらず、実行可能なコツや、利用しやすいツールが必要とされている。

腸内環境を改善する微生物を使ったプロバイオティクスやプレバイオティクスのサプリメントを開発する米企業シード・ヘルス(Seed Health)は、そうした状況を変えることを目指している。

同社は最近、カリフォルニア工科大学の研究結果に基づき、神経精神面の健康をプロバイオティクスで改善する革新的方法の開発を目指す「腸・脳開発プログラム(Gut-Brain Development Program)」をアクシアル・セラピューティクス(Axial Therapeutics)社と共同で立ち上げた。このプログラムは、不安やうつ病、ストレス反応などの改善に効果をもたらす可能性がある微生物叢(そう)と腸、脳のつながりに焦点を当てている。

プログラムの基盤となるのが、アクシアルの共同創業者で同社とシード・ヘルスの理事を務めるサーキス・マズメニアン博士の研究だ。同博士が率いるカリフォルニア工科大学の研究チームは、神経精神分野において腸管微生物と微生物代謝産物(微生物が造る化合物)が果たす役割を初めて発見した。プログラムの主な目的は、精神・情緒面の健康を改善する上で微生物をどう役立てるかを解明し、メンタルヘルス治療に革新を起こすことにある。

消化管の神経系と頭の神経系との関係は、ここ15年ほど人気の研究テーマとなってきた。シード・ヘルスの共同創業者で共同最高経営責任者(CEO)のアラ・カッツは「腸と脳のつながりとその商業利用においては、熱狂がデータに先行してきた。例えば、『サイコバイオティクス』の出現は、証拠に基づかないことが多いものの、新たな治療を求める声や意思の高まりを示している」と説明した。

ズーム会議で取材に応じたカッツは、メンタルヘルスの改善においては今、より多くの選択肢が切実に必要とされており、シード・ヘルスが微生物叢に焦点を当てた治療に革新を起こす一助となりたいとの熱意を表明。また、腸の健康がただのダイエットのトレンドではなく、実際の研究に基づき、体や心、情緒の健康を支えるツールとなりつつあるのは喜ばしいことだと語った。

「腸の健康の重要性は現在、科学で非常にきちんと実証され、一般市民にもよく理解されている。これはそれ自体が非常にポジティブなことだと思う。食生活が、腸内環境の管理に非常に重要であることを人々が理解し始めている」(カッツ)

またカッツは、ゲノミクスや長寿などに関する分野では一般の人々ができることが少ない一方、微生物叢の改善のためには「1時間でできることがある」と指摘。食生活や運動、水分補給など、人々が主体性を持って実行できることが含まれていると語った。

forbes.com 原文

編集=遠藤宗生

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