ただし、ここで重要な注記がある。カンファレンス・ボードの調査では、CEOが退任する年齢に達しておらず、なおかつその企業が、株主総利回りで業界の下位4分の1に入っていた場合は、「追い出された」ケースに分類される。結局のところ、企業はCEOの退任理由について、常に本当のことを言うとは限らないのだ。
「これは単純な話で、取締役会自体も、現在のビジネスを取り巻く課題にどう対処していくべきか、以前ほど確信が持てなくなっているのだ」とトネロは考察する。「その結果、取締役会が自社の経営幹部に課す業績指標の基準は、以前より緩やかになっている」
この分析からは、以下の3点も明らかになった。まず、取締役会が任命するCEOの年齢は若くなっている(ラッセル3000企業のCEOの平均年齢は、2017年には57.2歳だったが、2022年には56.8歳と、わずかに下がった)。また、ジェンダーの多様性実現への動きは停滞している(2021年に任命された女性のCEOはわずか3人で、2019年と2020年の各7人から減少した)。さらに、内部昇格の比率は記録的な高率に達し、2021年以来で最高となった。
ただし、CEO交代の理由については、基本的には数字での計測が難しい。黄金時代を謳歌したCEOの退任がパンデミックで遅れていたのを実行に移したケースや、取締役会が変革へと舵を切る確信を得たケース以外で、2022年にCEOの交代に踏み切る割合がどのくらいになるのかについては、容易に知ることはできない。
ただし全体で見ると、トップの交代率は2022年には高くなると予想されている。トネロはこれについて、リーダーたちの多くが「すっかり疲れ切っている」ことの現れかもしれないと見ている。「個人の話に基づいた情報ではあるが、そうした話を聞いている……。とても困難で過酷な時期が続いているからだ」とトネロは言う。
ヘッドハンターも、同様の現象を目にしているという。ハイドリック&ストラグルズでCEOサーチ事業を率いるボニー・グウィン(Bonnie Gwin)は、「最も恵まれた状況下であっても、CEOはとても厳しい仕事だ」と指摘する。
「それに加えて、コロナ禍、社会不安や社会正義に関する問題、そしてインフレと先の見えない世界情勢が加わっている。企業のトップは現在、こうした逆流に翻弄されている。実際、手を上げて『退任時期を前倒したい』と言いだす人もこの目で見てきた」とグウィンは述べる。「さらに、『その役割を引き受ける自信がない』という発言を聞いたこともある」
(forbes.com 原文)