この10日間であった何回かのロシア軍の出撃で、パイロットはウクライナの強固な防空に直面した。ウクライナ政府は8月29日から9月12日の間に自国軍がロシア軍機9機を撃墜したと主張している。独立アナリストがソーシャルメディアから写真やビデオを探し出し、攻撃機の「Su-25」と「Su-3」各2機、そして1機の「Su-30」を含む少なくとも5機の撃墜を確認した。
ウクライナ側がどのようにロシア軍機を撃墜したかは不明だが、英エコノミスト誌はドイツ製のゲパルト対空戦車(自走式対空砲)を挙げるウクライナの情報筋の見方を紹介した。ドイツ政府はウクライナにこの古い型の戦車20両を提供している。
ゲパルトはレオパルド戦車の車体に軽装甲の砲塔を組み合わせたもので、機動性と防御力に優れている。エリコン機関砲を2門搭載し、1分間に550発の弾丸を発射して3マイル(約4.8キロメートル)先まで飛ばす。乗員3人は砲塔に取り付けられたレンジ9マイル(約14.5キロメートル)のレーダーで合図を受ける。
防空システムである長距離「S-300」、中距離「ブーク」、短距離「ストレラ」、そして携行型ミサイルなどと組み合わさったウクライナ軍のゲパルトは、ロシア空軍の標的リストのトップにくるはずだ。ウクライナ軍の防空を抑え、標的を定めるサイクルを迅速化できればロシア空軍は再び存在意義を打ち出せる。
しかし、ロシアがウクライナに侵攻してから200日が経過したが、ロシア空軍はいまだにウクライナの防空網を見つけて追跡し、攻撃するための協調的な取り組みを行っていない。
ウクライナ空軍のSEAD(敵防空網制圧)作戦とは対照的だ。ウクライナの戦闘機「MiG-29」と「Su-27」は米国製の対レーダーミサイルを発射してロシアの防空システムをいくつか破壊して防空網を抑圧し、レーダーをオフにするようロシア軍を脅かしている。
これが、ウクライナ近くの基地にジェット機300機を抱え、ウクライナ軍よりもはるかに大規模なロシア空軍が稼働していないところで、生き残ったジェット機は100機ほどのウクライナ空軍が活発な理由の1つだ。現在続いている反撃の写真やビデオには、急速に動いている前線の近くで近接航空支援任務を行うウクライナ軍の飛行機が写っている。
あと数カ月で冬が訪れ、前線地帯が凍結する可能性もある。そうなれば、ロシアの指揮官は時代遅れの戦法が再び役立つことに気づくかもしれない。
しかし、その時までにはウクライナの防空はさらに危険なものになっているだろう。米国とドイツはウクライナに新型の優れた地対空ミサイルを提供すると約束しており、まもなく到着するはずだ。
(forbes.com 原文)