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2022.09.15 16:30

新時代のシンクタンク 五つの進化

筆者は、1987年に世界最大の技術系シンクタンク、バテル記念研究所で働いたのを皮切りに、1990年には日本総合研究所の設立に参画し、2009年には集合知創発型シンクタンク、TEDのメンバーとなり、2008年からはダボス会議を主催する政策系シンクタンク、世界経済フォーラムのメンバーとして活動してきた。

こうした経歴ゆえ、しばしばメディアから、「シンクタンクの未来」についての質問を受けるが、本稿では、そのビジョンを、少し大胆な形で語ってみよう。

筆者は、新時代のシンクタンクは、次の「五つの進化」を遂げていくと考えており、この未来ビジョンに基づき、2000年に、ネットワーク・シンクタンク、ソフィアバンクを設立し、活動を続けている。

第一は、「コーポレート・シンクタンク」から「ネットワーク・シンクタンク」への進化である。

従来のシンクタンクは、一つの組織(コーポレート)の中に様々な分野の「研究員」を集め、調査研究を行う「コーポレート・シンクタンク」と呼ぶべきものであったが、新時代のシンクタンクは、様々な分野で活躍する「知的プロフェッショナル」や「個人シンクタンク」がネットワーク的に集まり、随時、プロジェクトや事業を協働して行う「ネットワーク・シンクタンク」へと進化していくだろう。

第二は、「リサーチ・シンクタンク」から「インキュベーション・シンクタンク」への進化である。

従来のシンクタンクは、調査、分析、予測、評価、提言というデスクワークを中心に行う「リサーチ・シンクタンク」と呼ぶべきものであったが、新時代のシンクタンクは、社会の未来ビジョンを語るだけでなく、そのビジョンを実現するために、具体的な技術や商品、サービスやシステム、事業や企業、市場や産業の開発と育成(インキュベーション)を行う「インキュベーション・シンクタンク」へと進化していくだろう。筆者が、日本総合研究所に創発戦略センターを設立し、「ドゥータンク」のビジョンを掲げて取り組んだのは、そのインキュベーションの活動に他ならない。
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文=田坂広志

この記事は 「Forbes JAPAN No.096 2022年8月号(2022/6/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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田坂広志の「深き思索、静かな気づき」

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