こうした経歴ゆえ、しばしばメディアから、「シンクタンクの未来」についての質問を受けるが、本稿では、そのビジョンを、少し大胆な形で語ってみよう。
筆者は、新時代のシンクタンクは、次の「五つの進化」を遂げていくと考えており、この未来ビジョンに基づき、2000年に、ネットワーク・シンクタンク、ソフィアバンクを設立し、活動を続けている。
第一は、「コーポレート・シンクタンク」から「ネットワーク・シンクタンク」への進化である。
従来のシンクタンクは、一つの組織(コーポレート)の中に様々な分野の「研究員」を集め、調査研究を行う「コーポレート・シンクタンク」と呼ぶべきものであったが、新時代のシンクタンクは、様々な分野で活躍する「知的プロフェッショナル」や「個人シンクタンク」がネットワーク的に集まり、随時、プロジェクトや事業を協働して行う「ネットワーク・シンクタンク」へと進化していくだろう。
第二は、「リサーチ・シンクタンク」から「インキュベーション・シンクタンク」への進化である。
従来のシンクタンクは、調査、分析、予測、評価、提言というデスクワークを中心に行う「リサーチ・シンクタンク」と呼ぶべきものであったが、新時代のシンクタンクは、社会の未来ビジョンを語るだけでなく、そのビジョンを実現するために、具体的な技術や商品、サービスやシステム、事業や企業、市場や産業の開発と育成(インキュベーション)を行う「インキュベーション・シンクタンク」へと進化していくだろう。筆者が、日本総合研究所に創発戦略センターを設立し、「ドゥータンク」のビジョンを掲げて取り組んだのは、そのインキュベーションの活動に他ならない。