ことの発端は、昨年12月26日、大阪・梅田のビアホールでのこと。若いアトツギ社長たちを支援して中小企業の活性化を図る「ベンチャー型事業承継」という団体のトークイベントが行われ、ビアホールで懇親会が開かれた。そこで、ゲストの私(筆者)がビールを飲んでいると、向かいに座っていた男性が声をかけてきた。
「編集長、質問したいことがあるんですが」
「なんでもどうぞ」
「私は紙製の米袋を製造しているメーカーです。新米の時期に合わせて4月から10月まで工場の専用設備を稼働させて、袋をつくっています。ただ、それ以外の時期が閑散期なんです」
「日本人の米の消費量も生産量も減り続けていますから大変ですよね」
「ニーズが減っているから利益も昔より減ります。閑散期の工場の稼働について、どうしたらいいと思いますか」
いきなりバッターボックスに立たされて、豪速球を胸元ギリギリに投げてくるような質問である。こちらも酔っていたので勢いで即答した。
「そんなの簡単ですよ」
テーブルにいた若社長たちが全員、振り向いた。私はジョッキ片手にこう言った。
「どうしたらいいか、ツイッターで世の中に問えばいいじゃないですか」
スタンドの観客たちがズッコケて「空振りかよ」という様子で苦笑した。しかし、私はマジメだった。なぜなら企画とは誰かと会話して、言霊をまじりあわせればインスピレーションがスパークして、想定外のアイデアが浮かぶからだ。
〈ヒットをつくりたければ、仲間を増やせ〉が私の持論である。一人で考えてググっても、刺さるアイデアは生まれないという確信がある(天才は別ですが)。それに、困っていることを言葉にすれば、人間は絶対に手を差し伸べたくなるものだ。すると、質問をしたシコーという会社の一年生社長、白石忠臣さんは、意外な行動に出た。
年が明けて2月17日、スマホを見て、私は目が点になった。