米国・メキシコ国境を超える移民と、その死者数が急増

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米南部のメキシコとの国境沿いで死亡した移民の数は、2021年10月~22年9月はじめまでに約750人に上り、過去最高だった前会計年度(2020年10月~21年9月末)を上回ったことが、CNNが入手した米国土安全保障省のデータで明らかになった。米国はいま、稀に見る移民の急増に苦慮している。

CNNによると、2021年10月1日に2022年会計年度が始まってから、9月はじめまでに確認された死者数は748人にのぼる。この数が、年度末の9月30日まで増加を続けるのはほぼ間違いない。死者748人という数は、2021年会計年度に報告された過去最高の557人を、すでに200人近くも上回っている。

死者急増を招いた単独の要因があるかは不明だ。しかし、米南西部は繰り返す熱波に見舞われており、過去1200年で最悪の水準とされる干ばつに苦しめられている。メキシコとの国境沿いではこれまでも、猛暑のせいで移民がたびたび命を落としてきた。

米国への移民数は、ここ2年で急増している。米国境警備隊がメキシコとの国境沿いで2022年3月から6月までに逮捕した移民は、1カ月あたり20万人を超えた。

入手可能な最新データによれば、7月には逮捕者数が20万人をわずかに切るまで減ったものの、それでも2020年7月と比べてほぼ5倍だ。

米Forbesは、米国土安全保障省にコメントを求めたが、回答はまだ得られていない。

米国では、移民の急増がリベラル派と保守派の政治的争点となっている。米大統領ジョー・バイデンはその板挟みとなっており、両派から批判を受ける格好だ。テキサス州のグレッグ・アボット知事(共和党)を中心とした保守派が、国境警備を強化していないとしてバイデンを強く非難する一方で、民主党議員の多くはホワイトハウスに対し、さらなる人道支援を求めている。

バイデンの国境問題への取り取り組みに関する支持率は、他のどの主要課題と比べても圧倒的に低い。クイニピアック大学が実施した最新世論調査では、バイデンの国境政策を支持すると答えた人はわずか27%で、無党派ではその割合が24%まで低下した。

ただし、国境政策を最重要課題と考えている有権者はいまのところ少ない模様で、移民問題は米国に差し迫る喫緊の課題だと答えた人は8%にすぎない。それよりも、インフレや気候変動、中絶、銃による暴力のほうが重要視されている。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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