しかし2020年、2021年は新型コロナウイルスのパンデミックへの対応のため、オンラインでの開催となった。
映像自体は、2020年に初めてオンライン開催となったときと同様に、高い完成度とめまぐるしく場面と話者が変わる飽きさせないものだった。この形式になってから、あらかじめ各国の言語で翻訳字幕が用意され、オンライン越しに自国の言葉で発表を楽しむことができる。
一方、Apple Parkでは、シアターで事前に撮影・編集された映像を放映するというスタイルでのイベントだった。これは、2022年6月にApple Parkの社食を開放して行われた世界開発者会議「WWDC2022」と同じで、発表は映像、視聴は会場というハイブリッド形式だった。
ストリーミング映像には残されていないが、Steve Jobs Theaterには、イベント開始の3分前にティム・クックCEOが登場。映画初日の舞台挨拶さながらに新しい形式でのプレスイベントになる点を説明した。
Steve Jobs Theaterというプレスイベント専用設計の建物
WWDC2022の際には、プレスに加えて一部の開発者も集めてのパブリックビューイングであったため、社食の4階分の高さにもなる「窓」を開放し、屋外席と連結するかたちで、まるで野外フェスのようなスタイルで、最新のソフトウェアや技術についての説明を聞いた。
しかし今回はプレスイベントということで、1000人収容のSteve Jobs Theaterでのみイベントが展開した。朝、正円のシアターのロビーに人が集められ、コーヒーや軽食が振る舞われて開場を待つ。
その後、円の建物の外壁に沿って用意された階段で地階に案内されると、正面にシアターが現れる。ここで発表内容のプレゼンテーションを聴く。プレゼンの最終版になると、シアターの背後にあった弧を描いた壁がスライドして収納され、そこに発表された新製品のハンズオンコーナーが現れ、いち早く製品に触れることができる。
このSteve Jobs Theater自体が、プレスイベントのプログラムと導線に沿って設計されている。アップルは、プレスイベントのフォーマットそのものを巨大な建造物で規定するほど、こだわりを持っているのだ。
2年連続でiPhoneの発表をオンラインのみで開催し、少なくともiPhoneのセールスだけ見れば成功を収めている。そのため「アップルは今後もオンラインでの発表を続けるのではないか?」という考え方になっても不思議ではない。