プレゼンテーションが行われるシアターで反応を聞いていれば、そうした評価が意外なほどよくわかる。これが、アップルがリアルイベントを復活させたい理由だと考えられる。
今後もイベントは続くが……
アップルは招待客や社員も含めて、イベントに参加する人は前日の抗原検査を義務づけており、また会場内でも密にならないよう席に余裕を持たせていた。一方、米国ではすでにマスクの着用がオプション扱いで、アップルもそれにならい、会場内のマスクは必須ではなくなっていた。
パンデミックへの対応のために、一時はバーチャル開催となり、事前収録となった。プレゼンテーションのテンポの良さや演出の派手さ、言語の問題の解決など、良い面もたくさんあり、これを踏襲するイベントとなった。
しかし同時にイベント会場に呼び入れたプレスやゲストのリアクションやフィードバックも得られるハイブリッド開催のスタイルを取った。これにより、確実に情報を届ける手段を維持しながら、会場の反応を、アップルが製品の最大のゴールである「顧客満足度」の初期値として取り入れ、マーケティングに生かしていくことができるようになる。
新型コロナを経て、アップルのイベントは、その意義や完成度を高め、またアップルが得る情報を最大化することに成功しているとみている。
ただし、改善点もある。今回のiPhoneイベントで一点気になったのは、会場の完成とビデオのズレだ。
ステージでプレゼンテーションを進めるのであれば、会場内が拍手に湧いたとき、その拍手が止むまで演者はしゃべり始めるのを待つことができる。これも重要なインタラクション、コミュニケーションの1つだ。
しかし収録の場合、どの部分で聴衆が拍手をするか、ある程度の想定はするかもしれないが、その反応の大きさまでは予測の範囲外にある。そのため、拍手が続いていながら、ビデオの中の人が喋り始める自体もあり、会場で最初のひと言ふた言が聞き取れないという場面が何度かあった。
あるいは、このあたりもアップルは今後改善に動くかもしれない。それだけ、アップルはリアルイベントの開催へのこだわりを見せることも、想像に容易いのだ。