米セクハラ裁判の原告は税控除されるが被告は控除されない

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米国ではセクシャル・ハラスメント(以下「セクハラ」)の和解には必ずといっていいほど税金問題が発生する。雇用環境では、多くの場合、金銭の一部は源泉徴収された給与となる。しかし、それ以外のほとんどの金銭は精神的苦痛のためであり、IRS(米国国税庁)様式1099の課税対象になる。

もしあなたが、精神的苦痛の賠償請求をすれば賠償金は課税される。もしあなたが、身体的損傷の原因あるいは体調不良になった原因は被告にあると主張すれば、賠償金は非課税になるかもしれない。しかし、ほとんどのセクハラ裁判の原告は、そのために多くの苦労をする。原告は被告が病気の原因であることを証明する必要はないが、原告がそれを主張したことを示す必要がある。さらに原告は被告がその主張を知っていて、支払いの際にそれを考慮したことを示さなくてはならない。

身体的疾患を証明するために、原告は医療の証拠および、被告が症状の原因であるか悪化させたと原告が主張した証拠を示す必要がある。医療の証拠は多いほどよく、医療専門家の書いた書類はその1つだ。被告のなかにはハラスメントが心的外傷後ストレス障害(PTSD)を誘発したと主張する人もいて、PTSDは税務上ほぼ間違いなく「身体的」であるとされる。しかしIRSは、裁判による和解のほとんどに課税しており、厳密な文言が重要になる。そして税金は、弁護士費用を引いた原告がいくら手にするかを大きく左右する。

被告が企業の場合、訴訟和解はほとんどが控除対象であり、裁判費用も同様だ。実際、企業が別の企業を賠償する場合や不動産を購入する場合など、裁判費用を資産から算出する場合を除き、企業にとって裁判費用はほぼ例外なく課税控除の対象になる。控除対象でないことが明らかな行為(たとえば企業が政府と罰金支払いの交渉をする)に関連する裁判費用でさえ課税控除される。罰金自体は控除対象ではなくても、裁判費用は対象になるというわけだ。懲罰的損害賠償金すらも、企業にとって控除対象であり、不正がどれほど悪質であっても変わりはない。過去数十年間に、懲罰的損害賠償金を控除対象から除外する法案が何度か議会に提出されたが、通過したことはない。
 
しかし、2017年末に「通過」したものが1つある。2018年から、セクハラあるいは性的虐待事例における秘密裏の和解が課税控除対象から除外された。関連する裁判費用も同じく非控除対象であり、ここでの裁判費用に関する課税措置はことのほか厳しい。税法162条には、控除対象になる経費全般のリストが載っている。しかし今、162条(q)には以下の記載がある。

「(q)セクシャル・ハラスメントおよび性的虐待に関連する支払い──以下に挙げる場合において、本章に定めた控除は認められない──(1)セクシャル・ハラスメントあるいは性的虐待に関わる和解または支払いで、その和解あるいは支払いが守秘義務契約の対象となっている、あるいは(2)そのような和解あるいは支払いに関連する弁護士費用」
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翻訳=高橋信夫

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