チップに加えてキッチンフィー? 米国民が戸惑う「新料金」とは

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ご存知の通り、アメリカにはチップの習慣がある。チップの相場は地域により異なるが、レストランで食事をすると、食事代金とは別に20%前後のチップを支払うことになる。

そして今、このチップとは別に、「キッチンフィー」なるものを加算する習慣が広がりつつある。

厨房スタッフに配分される「キッチンフィー」


レストランで支払うチップは、注文を受けて料理を運ぶサーバーがメインで受け取るものだ。すると、厨房で料理やドリンクを作るスタッフには、ほとんどチップがまわらない。そのため、キッチンで働く厨房スタッフへの感謝の意をこめて生まれてきたのが、「キッチンフィー」や「キッチンアプリエーションフィー(厨房スタッフへの感謝料の意味)」だ。

キッチンフィーは食事代金の2~3%程度に設定されていることが多く、チップに比べるとずっと少ない。しかしキッチンフィーが導入されている店で食事した人は、食事代金に加えて、税金、チップ、キッチンフィーを支払うことになり、その金額は決して無視できるようなものではない。仮に食事代金が100ドル(約1万4000円)だった場合、すべて含めると合計金額はおよそ130ドル(約1万8000円)にもなる。

財布には痛い話だが、キッチンフィーを導入する店はアメリカ全土で増えており、先日、ハワイの大手ファミリーレストラン「ジッピーズ」では、店内で食事した人に対して2%のキッチンフィーをチャージする新制度が導入された。

同店はハワイに住む日系人が始めたファミリーレストランで、ハワイ内に20以上の店舗を展開。地元住民にとてもなじみのある大手ブランドがキッチンフィーを導入したことで、この動きがさらに広まっていく可能性がある。

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(c)Zippy’s

背景には、スタッフ間の収入格差と人手不足


このキッチンフィー導入の背景には、さまざまな問題が複雑に絡み合っている。その一つが、サーバーと厨房スタッフの格差だ。従来、チップのほとんどはサーバーが受け取るもので、客単価の高い高級店ではサーバー1人が受け取るチップが一晩だけで数百ドルに達することもあるが、厨房スタッフにそれらが分配されることは少ない。そのため、長年の間、サーバーと厨房スタッフの間には収入の格差や不平等感が生まれていたという。

これに追い打ちをかけたのが、飲食業界全体が抱える人手不足だ。新型コロナのパンデミックで大きな打撃を受けた飲食業界では、就職を希望する人の数が減少している。
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文=佐藤まきこ

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