経済・社会

2022.09.18 08:30

サル痘に関する情報発信で気を付けるべきこと

Photo by Mario Tama/Getty Images

北半球の先進国で感染が拡大しているサル痘に関する研究を率いる専門家は、この病気に関する情報発信方法を変える必要があると説いている。

ここ数カ月にわたり重要なサル痘研究を主導してきたクロエ・オーキン博士は、サル痘ウイルスに感染する可能性の高いグループとしてゲイやバイセクシュアル、そして男性と性交渉する男性に言及する際に、「性的活動をしている」という形容句を加えるべきだと指摘している。

オーキン博士は、サル痘に関するポッドキャスト番組「What The Pox?」の中で、「リスクの高いグループに対してレッテル貼りを避けながら公衆衛生介入を行う際は、デリケートなバランスが必要とされる」と語っている。

「“誰もがサル痘にかかる可能性がある”、“ゲイの病気ではない”、“アフリカの病気ではない”といった言い方には危険が伴う。これらは正しいものの、それだけではなく“性的活動をしているゲイやバイセクシュアルの男性のネットワーク内で感染が広がっている”と加えるべきだ」

「“性的活動をしている”という表現を必ず付け加えることが重要だ。ゲイ男性のコミュニティー全体で感染が広がっているわけではなく、“性的活動をしている”ゲイ男性のコミュニティーで起きている。最もリスクの高いコミュニティーに対して、公衆衛生上の介入をすべきだ」

このような配慮により、最も重要なグループに必要な情報を届けると同時に、LGBTQなどを含む性的少数者全体にレッテルを貼ることを避けられる。オーキン博士は、性的少数者コミュニティーが過去のHIV流行時に経験した苦痛や憎悪と同じことが今も起きていると指摘。過去の過ちを繰り返さないため、表現の変更を訴えている。

メディアでは、ゲイ・プライドのイベントを「スーパースプレッダー」と呼ぶなどの扇情的な表現が使われてきた。また、同性愛者向けの出会い系アプリ「Grindr(グラインダー)」上で出された性の健康に関するアドバイスについて、「警報」が出されたという不穏な表現で伝えたメディアもあったが、実際には同アプリでこうしたアドバイスが発信されることはそこまで珍しくはない。こうした報道が、ウイルスにまつわる偽情報や誤解と入り混じって広まっている。

これにより、多くの性的少数者が弱い立場に置かれている。筆者を含め多くの人が、「サル痘はゲイやバイセクシュアル男性の病気ではない!」という抗議の声を上げたのはそのためだ。だがもちろん、この誤情報に言及することは、たとえそれを否定する目的であっても、誤情報を浸透させる効果を生んでしまう。

ポッドキャストシリーズ「What The Pox?」にゲスト出演した性の健康に関する専門家たちもまた、オーキン博士の意見に賛同している。こうした抗議の声を上げること自体が、サル痘に関する情報を必要とする人々に対して大きな害を与えていることになるのだ。

少なくとも英国では、大規模な性的イベントに参加した人々を含む緊密な性的ネットワークの存在により、サル痘患者の大多数(95%以上)が「性的活動をしている」ゲイ男性とバイセクシュアル男性となっていると言える。

だからこそオーキン博士は、「性的活動をしている」という表現を使うよう呼び掛けているのだ。そうすれば、コミュニティー全体にレッテルを貼ることなく、どんな人に危険があるのかを明確にできる。

forbes.com 原文

編集=遠藤宗生

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