ビジネス

2022.09.13

Google、Appleを経てパナソニックへ「なりたい自分になるために」自分の苦労を会社にしたヨーキー

Yohana 創業者兼CEO 松岡陽子(写真=Carolyn Fong スタイリング=Rachel Cubra ヘア&メイクアップ=Lindsay Dabalos)

「テクノロジーと人間の力を合わせて、もっと人間の生活の役立つものを作りたかった」。シリコンバレーの女性エグゼクティブの新たな挑戦とは──。

次号、Forbes JAPAN 9月24日発売号の特集は「Difference is a Strength! 隠れた才能を生かそう」だ。「何になりたい」から「どうありたいか」へ。新しい時代、新しい成功の形を模索する人たちに取材した本特集の記事を、先行配信する。


「やっとあなた、自分の人生の苦労を会社にしたのね」。YohanaのCEO、松岡陽子は親しい友人にそう言われたという。シリコンバレーのハイテク産業のトップで活躍する数少ない日本人──。そんなイメージの強い松岡だが、彼女をよく知る人から見れば、今回のYohanaの起業は、実に自然な流れだったのかもしれない。

松岡は、アメリカで天才賞と呼ばれるマッカーサー・フェローを受賞したAIとロボティックスの専門家。有名大学で助教を務め、Googleの次世代技術の開発を担う研究機関である「Google X」や、アップルなどでプロダクト開発を担当。

2017年には、Googleに買収されたNestのCTOとして、Forbes JAPANの表紙を飾った。シリコンバレーでは「ヨーキー」と親しみを込めて呼ばれる彼女が、20年に突如パナソニックホールディングスの執行役員に就任し、周囲を驚かせた。翌年、米シアトルでYohanaメンバーシップをローンチし、これまで1000世帯がすでに利用。今年9月13日には、日本でのサービス開始に漕ぎ着けた。 

Yohanaメンバーシップは忙しい家族のくらしを専門チームがサポートするファミリーコンシェルジュサービス。月額18000円で、誕生日などのイベント企画から病院や美容院の予約など、日々のToDoリストのタスクをその道のプロに任せることができる。

利用者はアプリをインストールし、お願いしたいタスクを入力。客室乗務員や個人秘書、イベントプランナーなど、さまざまな経歴のスペシャリストが、その人に合った提案をし、手配までをワンストップで支援してくれる。

AIの研究者でもある松岡がこだわったのは、AI使って効率性を上げながら、実際の「人間」が利用者に寄り添ってタスクをこなす、AIと人間のハイブリッドのサービスだ。松岡には意外な過去がある。実は元テニス選手で、プロを目指して16歳で渡米したが、怪我でその夢を諦めざるを得なかった。そこから人間の手や足の代わりとなるロボティクスの研究に打ち込むようになった。

「大学院にいるころから、テクノロジーを使って人々の生活をよくすることがミッションでした」。カーネギーメロン大学では助教としてリハビリロボットの研究に打ち込んだ。その後松岡はより早く結果の出せるビジネスの世界へ飛び込む。

「GoogleでもAppleでも、やりたかったのは結局同じ。どうしたら、テクノロジーで生活の障害を取り除き、人々が自分のやりたいことができるのか、なりたい人になれるのかを考えてきた」

そこで松岡が気づいたのは、真に人の助けになるには、ロボットやAIだけでは無理、ということだ。「テクノロジーと人間の力を合わせて、もっと人間の生活の役立つものを作りたかったんです」
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文=成相通子、岩坪文子

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