ビジネス

2022.09.14 16:30

ジーンズの産地・倉敷で「循環する服」をつくる

2020年に岡山県倉敷市で誕生したジーンズブランド「land down under」。長く着られて、かつリサイクルしやすいデザインを追求したジーンズを販売し、「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」の実現を目指している。

運営するのは2018年に東京から「地域おこし協力隊」として、地域産業の振興をミッションにこの地に移住した池上慶行。デニムやジーンズの産地でもある倉敷で、地域産業と環境を守るべく、「資源も技術も、関わる人たちの想いも循環していくブランド」を立ち上げた。

池上は元々、都内に本社があるアパレル企業に務めていた。モノづくりへの興味が強かったこともあり、配属された店舗でスタッフとして働くうちに「もっとモノづくりの現場に近づきたい」との思いが湧き、4カ月で退職。「現場」を求めて、倉敷市児島に移住した。

倉敷市は、同じ岡山県の井原市と隣接する広島県福山市を含めて、世界的に有名なデニム、ジーンズの産地。数ある日本の繊維産地の中でも、池上がデニムやジーンズの産地を選んだのには理由があった。

「ジーンズは、長年着続けるうちに色落ちしたりヒゲが入ったりと変化していきますが、それを“経年変化”として楽しむ文化があります。育てながら長く着続けることができる、サステナブルにも通じる洋服だという点に惹かれました」

リサイクルがしやすいようにジーンズを設計


地域おこし協力隊としてまずおこなったのはフィールドワーク。地域で働く人々とのつながりをつくり、地域課題をリサーチした。3カ月ほどを経て気づいたのは、「生産者同士にビジネス上の取引関係はあっても横のつながりはあまりないこと」「産業と観光客をつなぐような機会や場所が少ない」といったことだった。

「地域に住んだり働いていたりする人たちが交流し、さらに、訪問してきた外部の人とのつながりをつくることのできる場があれば。そこから生まれる産業振興もあるのではないか」

そう考えた池上は、2019年9月にカフェ兼ゲストハウスをオープン。それから半年ほどは、店舗の運営やイベント企画などをしながら、工場を見学に行くなどして繊維産業に関わる人々との交流も続けていた。そんな中で、起業への想いが高まった。



「僕は生産の現場にいるわけではなかったので、現場で働く方々の悩みを聞いているときに、同じ目線で話ができないことがもどかしくて。このままずっと『外から来た人』のままでいるのは嫌だなと感じました。そうではなくて、小さくてもいいのでリスクを背負ってモノをつくる立場になり、産地や工場の状況を少しでも良い方向にしていきたい、と」
次ページ > これなら私がやる意味がある

文=尾田健太郎 取材・編集=田中友梨

タグ:

連載

リジェネラティブ・ファッション

ForbesBrandVoice

人気記事