異邦人からパートナーへ
これまでのTICADに関する日本の報道は、「アフリカの重要性と日本の資金援助の大切さが明らかになった」と結ばれていることがほとんどであったが、今回、果敢に臨んだベンチャー企業の経営者達によって、本当の姿が浮き彫りになったといえる。
登壇企業のひとつ、「シュークルキューブジャポン」は、2018年に日本で設立。2020年には、セネガルに現地法人「TUMIQUI JAPON SASU」を設立し、未電化地域で、電気と通信を組み合わせたデジタル・インフラの導入を進める「TUMIQUI PROJECT(ツミキプロジェクト)」を推進している。これまで、保健省や教育省とMOUを締結し、病院や学校への電化&インターネット接続を次々と実現してきた話題の会社。さらには、完全オフグリッドのミニデータセンターを設置するなど、アフリカに於ける実績を確実に積み上げてきた。そして今回の国際会議では、「WARPSPACE」と共同でアフリカの協業事業に向けたMOUを発表。そんな佐藤弘一代表が感じたTICADとは?
「前回、パンデミック前の2019年は、EXPOのように数千人単位の人が行き交う開かれた雰囲気でしたが、今回は、大変クローズドな印象でした。これまでは日本のビジネスといえば、大企業からスーツを着た人間が出張で訪れ、硬い話をして帰国する。現地の人から見たら『異邦人』に映ったことでしょう。しかし今回は、本当にアフリカに関わる限られたスタートアップ企業10社が参加し、一歩進んだアフリカ事業の話が出来たので、やっと『パートナー』として認識してもらえたのではないか?種をまかないと実が出ないように、種をまく人がいる限り、成長する可能性を持ち続けることが可能。それを肌で確信しました」
綺麗事は刷新! 本気度を試される日本の立ち位置
一方で、「TICAD 8 Business Forum」全体を通して日本の立ち位置が見えてきた。それは、日本がプレゼンスやリスペクトが希少であるが、焦りや危機感がまだまだ希薄だという指摘も聞こえてくる。圧倒的な伸び代しかないアフリカ支援を国として是が非でも成功せねば!という本気度が、今後の柱となってくるのかもしれない。アフリカの成長と日本、ひいては他人ごとでない自分ごととして人生の交差点を見つけるのが、TICADを継続するうえで、本当の意味でのパートナーシップなのであろう。