ビジネス

2022.09.13

スタートアップ起業家が見たアフリカ国際会議「TICAD」


日本は、スタートアップ元年を宣言


「コロナ禍の関係で、入場制限をかけていたこともあり、規模はそれほど大きくなかったのですが、街中が国際カンファレンス一色で埋め尽くされていた印象。今回は、WARPSPACEの活動をスピーチして欲しいとオファーを受けて登壇しました。我が社は、衛星間通信システムを開発している会社で、この会議で戦略やビジネスを紹介することで、モチベーションがマルチプルに高まったように思います」。

会期中、多くのアフリカの大臣達がオーディエンスとして参加。また、WARPSPACEとシュークルキューブとのMOU締結式には、日本からは、経産副大臣や外務大臣が出席し、セネガル大統領が見届け人であった。さらに、各局のTVでは、トップニュースとして流れていることもあり、自身が考える以上に大きな手応えを感じたという。

ところが、全体として日本のスタートアップの存在感の薄さに危機感を感じた常間地CEO。一方で、本来のアフリカの国を支援する目的であったTICADが、今回は日本政府もアフリカ諸国も声を大にしてスタートアップというキーワードを前面に押し出している印象。新総理体制になって初めてのこの会議で、「スタートアップ元年」と謳うようになった。



国際会議規模のなかでは少数精鋭で開催されているアフリカ開発会議に、何故飛び込めたのか?というクエスチョンに「私は、気持ちや日程にフレキシビリティーを持って参加することを肝に命じています。現場対応をこなしていくことで、大きなリターンが得られるからです。しかし、多くの日本企業はこのリスク回避をしてしまう反面で、大きなリターンを逃しているのかもしれません」と常間地CEO。

今回は、「スタートアップの力を使ってアフリカを変えよう」と「サステナブル・エナジー」がキーワードとなった。アフリカの持つ天然資源が金脈を産むのでなく、日本が得意とする太陽光や水素などのエネルギー・インフラ関連技術、通信やロジスティックス、ヘルスケア等を中心とするハイテクソリューションなどを提供することで、アフリカの経済成長やSDGsも推進していけるのではないだろうか?さらに、教育や人に投資することがサステナブル成長のドライブソースになる。つまり、インフラ投資よりも、「ソフトウェア」や「スタートアップ」や「ヒューマン・リソース」が重要となっている。

現場を体験しての常間地CEOの成果は、自社の掲げている宇宙産業の存在感を関係者に残せたこと。驚いたことに、登壇後、大臣が気軽に声を掛けてくれてリアルな意見交換を交わせたのが、TICADに参加した大きな財産となった。また、アフリカへの理解も深めることが出来たという。



「50カ国以上ある広大なアフリカは、国によって国民性が異なります。例えば、開催国のチュニジアは、スタートアップとしてエコシステムが多数あります。フランスの影響を受け、外国人への対応も慣れていて、とってもフレンドリー。でも、それは観光国家だから。一方、経済成長著しいナイジェリアは、日本に対してプライオリティを置いていないのを感じました。『日本に何が出来るのか?』というスタンスで」。アフリカといってもそれぞれに異なるので、よく知っている人にレクチャーを受けるなど、事前情報の収集を積んでおいた方がいいと実感した。


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文=中村麻美 取材協力=加藤寛氏、インターステラテクノロジズ 山口博則氏

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