ビジネス

2022.09.14

映画館通い放題のムービーパスが復活、試験サービスを開始

Getty Images

「映画館に通い放題」をうたうサブスクリプションサービス「ムービーパス」は3年前に経営破綻したが、創業者のひとりステイシー・スパイクスは現在、同社の復活を目指して、新たなサービスの構築に取り組んでいる。

ただし、以前のように、定額で映画館に通い放題というわけではない。ユーザーが居住する地域によって異なる、段階的な月額料金を設定している。

インサイダーによると、ムービーパスの予約リストに登録した人に対しては、月額10ドル、20ドル、30ドルという3つの料金メニューが提示されるという。

米国にはおよそ4600カ所の映画館があり、年間の売上高は合計で約180億ドルほどだ。サブスクリプション(定額課金)方式の映画見放題サービスを始めた映画館チェーンもあるなかで、ムービーパスを復活させようとするスパイクスにとって、今は適切なタイミングと言えるのだろうか?

ムービーパスによると、同社は全米の映画館のうち25%と提携している。ユーザーに対しては、サブスクリプションの料金タイプに従って、映画を鑑賞可能なクレジットが一定額付与されるという。

ポストコロナの状況を受け、劇場での映画鑑賞が復活しつつあるなかで、リーガル・シネマズやAMCエンターテインメント、アラモなどの映画館チェーンも、ムービーパスに類似したサービスを始めている。スパイクスの2019年当時の発言によると、AMCとムービーパスには提携の話があったが、同チェーンの最高経営責任者(CEO)にアダム・アーロンが就任した際にこの話が頓挫し、ムービーパスは破綻を余儀なくされたという。

では、今に至るまでのムービーパスの経緯を振り返ってみよう。一時は、停滞した映画館業界におけるイノベーションの申し子ともてはやされたムービーパスの興亡は、それだけで映画館の大きなスクリーンで見るに値する物語だ(ここでご紹介しておくと、俳優のマーク・ウォールバーグが関わる制作会社が、実際にムービーパスの軌跡を追ったドキュメンタリーを制作している)。

「月額10ドルほどで映画館通い放題」というムービーパスのサービスについては、話がうますぎるように感じていた人も多かったはずだが、その予感は的中した。まず、2018年1月には、創業者のスパイクスが同社を追われた。

この追放劇からほどなくして、サブスクリプション方式の映画鑑賞サービスのトップに君臨していたムービーパスはあっけなく転落した。当時の親会社だったビッグデータ企業ヒリオス・アンド・マセソン・アナリティクスは、加入者数の急減に直面した。バラエティ誌の報道によると、最盛期には300万人以上いた加入者は、2019年4月の時点で22万5000人にまで急減したという。
次ページ > 「仲良しは分け合う」の精神

翻訳=長谷睦/ガリレオ

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事