シンクタンクのブルッキングス研究所によると、卒業から4年が経過した段階で、黒人の学生ローン債務者が抱える返済額は平均5万3000ドルだが、同じ立場にある白人では平均2万8000ドルだ。返済すべき学生ローンがあれば、住宅を購入したり、クレジットカードの借金を返済したり、退職金を積み立てたりといった、他の金銭的な目標に力を入れることができない。
米国では、4年制大学に通う黒人学生の86.6%が、連邦政府の学生ローンを借りている。若い世帯の借金がなくなれば、人種による富の格差を縮めるための出発点に立てるだろう。
アーバン・インスティテュートによると、総年収が12万5000ドル未満の世帯のうち、学生ローンの借金を抱えている世帯は約19%にのぼる。連邦政府への未払い学生ローンは総額1兆6000億ドルで、バイデン政権はすでにそのうちの320億ドル近くを帳消しにしている。
全米黒人地位向上協会(NAACP)のデリック・ジョンソン(Derrick Johnson)会長は、「黒人の学生ローン債務者は、卒業から4年が経過した段階で、平均5万3000ドルの借金を抱えている。この額は、同じ立場にある白人学生のおよそ2倍だ」と指摘する。債務者1人あたり1万ドルの返済を免除すると、総額は約3210億ドルになる。これは、学生ローン債務者のおよそ3分の1の借金が、丸ごと帳消しになる計算だ。
学生ローンにまつわる不公平に取り組むことで、人種間に横たわる富の格差に、長期的なプラスの影響を与えられることは間違いない。シンクタンク「ルーズベルト・インスティチュート(Roosevelt Institute)」がまとめた内容によると、学生ローン債務者1人あたり最大で5万ドルの返済を免除すれば、黒人の資産がすぐさま40%増加するという。
米国には、教育を受けるために借金をしている人が4000万人以上いる。そのうちの約25%が、返済を滞納しているか、債務不履行に陥っている。
若年層の黒人が教育を受けるために抱える借金は、同年齢層の白人より85%も多く、その差は、大学を卒業してから毎年7%ずつ広がっていくことが、人種と民族の社会学に関する学術誌で発表された最新研究で明らかになった。
教育の機会格差解消を目指すNPO団体「ザ・エデュケーション・トラスト(The Education Trust)」が実施した研究「ジム・クロウの借金(Jim Crow Debt:「ジム・クロウ」は黒人の蔑称で、米国の黒人差別体制の象徴的表現)」によれば、黒人債務者の多数は「借りたことを後悔」しているという。
学生ローンの返済を免除することで、債務超過に陥る世帯はかなり減り、所得と富の分布は、より平等化が進むだろう。バイデン政権は現在、1人あたりの免除額を5万ドルに引き上げるよう、他の民主党議員から圧力を受けている。
(forbes.com 原文)