さらに地元での起業も減少しており、自営業者が地元で大きな収入を得ることは滅多にないこともわかっている。
「小規模な事業で大きな利益を上げることが困難になっている」と研究チームは説明する。「利益を増やすのは難しい。そのような地域でも成功例があることは確かだが、現在では成功例は少なくなっている。マクロレベルで利益を絞り出すのはとにかく難しい」
これは、起業資金が必要な分野から自営業者が遠ざかり、建設業や保育などの分野に移行している一般的な傾向とつながっている。1970年代には小売業やホスピタリティ業が自営業の約55%を占めていたが、2010年代には23%にまで減少した。
実際のところ、これは自営業者の収入と組織から支払われる賃金の差が開く傾向と一致しており、近年サラリーマンの方が自営業者よりも収入が多い。例えば、1970年代には自営業者の10~15%程度が所得上位5%に入っていたが、2018年にはその割合は7%程度に低下している。
厳しいギグワーク
こうした傾向は、科学者やエンジニアの自営への移行を調査した米マーサー大学の研究結果でもみられる。自営業の科学者やエンジニアは雇われている人よりも収入が少なく、就労にともなう手当を考慮するとなおさらだという。そのため、研究チームは自営への移行の背景にある動機を探り、中でも仕事に対する大きな満足感を求める気持ちが移行の主な理由であるかどうかを調べた。
データでは、高学歴の科学者やエンジニアは自営に移行した後、収入を増やせないことが多い傾向が示された。さらに、仕事に対する満足度も当初は高くても時間とともに低下していき、収入も仕事への満足度も上がらないようだ。自営への移行が自発的なものか強制的なものかはわからないが、一般的に最も所得の低い人々が自営に移行したことをデータは示唆している。
また、短期的な仕事満足度の向上はサラリーマン業に転職した人たちにも同様に見られたことが明らかになった。どういう人が転職するかという点では、おそらく驚くことではないが給与の高い人はそのまま勤務を続ける傾向にあるが、時間とともに仕事への満足度は低下している。最も転職しやすいのは仕事の満足度が低い人たちであり、転職によって収入と満足度の両方が向上するのが一般的であることがわかった。
これは必ずしも自営はよくないというわけではない。しかし、自営になる金銭的な動機が満たされず、他の動機の方が報われる可能性があることを理解することが大事だろう。
(forbes.com 原文)