キャリア・教育

2022.09.12 10:30

英エリザベス女王の死から学ぶ企業の後継者育成

安井克至

スムーズなトップ交代を実現する


米テレビ局CNNは「今年、女王の健康状態が悪化し、議会開会式などの公務をキャンセルしたため、チャールズ皇太子はすでに女王の公務をいくつか引き受けていた」と報じている。

「チャールズ皇太子もウィリアム王子も自分たちの予定より女王の予定を優先していた。2人とも女王が特定の目的のために公務を任せられる者として活動してきたところで、そうした公務をさらに引き受ける義務があった」とCNNは報じている。

米商事改善協会国家プログラムの最高人事責任者で、Growth Minded Leadershipグループの創設者であるエイミー・クラークは「これはビジネスにとって最大の学びの機会だ。迅速に行動し、スムーズな継承とするために準備を整え、人材を育成しなければならない」と述べた。

クラークは企業における2つの事例を挙げた。

「防錆潤滑剤メーカーのWD-40では、長期にわたるトップ交代計画の一環として、このほどCEO職を退いたギャリー・リッジの後任としてスティーブ・ブラスを育ててきた。これはWD-40を未来に引き継ぐためによく話し合われ、いいかたちで慎重に運ばれた計画のすばらしい例だ。

「また、JPモルガンチェースは2020年に健康不安から復活したジェイミー・ダイモンのケースで用意していた緊急代替案を効果的に発動させた。ダイモンがCEOとして復帰できるようになるまで自信を持って効果的な経営を行えるよう、2人の上級幹部が準備していた」とクラークは指摘した。

将来のリーダーを慎重に育成する


後継者候補はお飾りではなく真のリーダーとして位置づけなければならない。

米マサチューセッツ大学ローウェル校の客員講師であるキャサリン・リムシャは「チャールズ皇太子は決してリーダーとして位置づけられていなかった」と電子メールで語っている。

「英王室は今回の王位継承のために時間をかけて準備したチャールズ皇太子のリーダーシップブランドを戦略的に管理することができただろうが、強さや自信という点でチャールズ皇太子をうまく位置づけることができなかった。チャールズ皇太子は国を導くのに必要なスキルとサポートを持っているかもしれないが、王冠が彼を飛び超えてウィリアム王子に行くかもしれないというこれまでの見出しや伝聞でさえ、チャールズ皇太子の準備に何かが欠けているかもしれないことを示していた」とリムシャは述べた。

そして「王室が定めた継承法の関係でそうならないかもしれないが、ウィリアム王子が現職の父親よりもリーダーとして見られていることがわかる」とした。 

英王室は明らかにこの継承のために何年も前から計画を立てていた。計画が作成され、後継者を確保していた。そして今「経営陣」はそれを実行する準備ができているのだ。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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