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2022.09.12 08:00

マネフォの危機を救ったデザイナー 「トップの言葉」をどう伝えたのか?

左から、マネーフォワードの金井恵子とCEOの辻庸介(撮影=小田駿一、デザイン=中根涼花)

組織の求心力をどう保てばよいのか。コロナ禍でテレワークが普及するなか、自らの熱量の伝え方に苦悩するリーダーは多いだろう。

では、より良いチームを構築するうえで必要となるのは何か。それは「情熱の通訳者」だ。本連載では、トップの想いを言語化し、現場に届ける役割を担う人たちを「情熱の通訳者」と名付け、言葉の作り方や組織への浸透プロセスに迫る。

初回は、2012年に創業し、家計簿や資産管理アプリとして知名度を上げ成長したマネーフォワードの金井恵子(かないけいこ)。実は同社は、スタートアップ業界で「社内カルチャーの浸透」に最も成功している企業の一つとして有名だ。

2014年にデザイナーとして入社した金井は、創業初期から、CEOの辻庸介(つじようすけ)とともに、カルチャーの醸成や組織デザインを担ってきた。

しかし、会社の急成長とともに、社員間に軋轢が広がっていったという。一時は「組織が回らなくなった」というほど危機を迎えた2015年、金井は同社の経営理念にあたる「ミッション、ビジョン、バリュー、カルチャー(MVVC)」の策定に取り組み始める。

現場で起きた不協和音をどう解決したのか。トップの想いを言語化し、組織を蘇らせた道のりを、辻と金井の二人が赤裸々に語ってくれた。


100人の壁


:金井と初めて出会ったのはデザイナーの採用面接です。社員がまだ20人ほどの時代で、なかなか人が来てくれないなか、応募してくれました。

金井:私が入社した理由は、会社全体のデザインをしてみたいと思ったからです。でも今のような仕事を任されるようになったのは、辻との信頼関係が深まってからです。

──なぜMVVCを作ることになったのですか。

金井:入社した頃のマネーフォワードは人数もプロダクトも少なく、誰も辻が話す言葉に疑問を持ちませんでした。社内に一体感があった。

でも新しいメンバーが増え、100人に近づいてきた2015年頃から、今までと同じ言葉で話しても伝わらないと感じるようになりました。しかも古いメンバーからも意思決定のプロセスに疑問の声が漏れるようになっていたんです。

たぶん、「なぜこれをするのか?」という理由が、どの社員にもうまく伝わらなくなっていたように思います。
 
:その原因は、毎日すごいスピードで成長し、人が増えているのに、みんなが別々の方向を向いていることに気がつかなかったからです。問題が起きると、ユーザー目線を重視すべきか、収益を重視すべきか、わずかの差で意見が分かれるといった摩擦がよく起こっていました。

人数が増えるにつれ、経営が何を基準に意思決定しているのか、誰も見えなくなってしまっていたのです。一時は、悪循環にはまり、営業と開発メンバーが対立したり、全社チャットで経営批判が繰り広げられたり、退職者も増えて組織がバラバラになりそうになったこともありました。
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文=吉見朋子 取材・編集=露原直人 撮影=小田駿一

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情熱の通訳者─リーダーの想いを届ける言葉の作り手たち

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