円安はどこまで進むのか?
ピクテ・ジャパン ストラテジスト 糸島孝俊氏に聞いた。
足元で進む円安の背景。それは、よく指摘されるように日米の金利差にほかならない。
8月26日に経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」で、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は「景気を犠牲にしても物価高を定着させない」と述べ、利上げによるインフレ阻止への強い意思が示された。
また、同じく欧州中央銀行(ECB)のシュナーベル専務理事の講演でも、「高いインフレが定着する可能性とコストは不快なほど高い」とし、中央銀行が目先の景気よりもインフレをおさえることを重視する姿勢を示した。
つまりは、アメリカもヨーロッパも断固として利上げをするというメッセージである。
一方、「緩和継続以外に選択肢はない」と語る日銀の黒田東彦総裁の姿勢は対照的だ。
こういった相反する日米の金融政策の姿勢の違いが、足元の円安・ドル高を進めさせる背景にあっただろう。
そんな中、「介入すればよい」という声も聞かれるが現実的ではない。介入には米国側との協調が欠かせない。
また、鈴木俊一財務大臣が円安に対する「必要な対応」を記者団に問われた一連の姿勢からも、投資家からは介入ができないだろうということを見透かされている。
今後の注目のポイントとして、アメリカの中間選挙がある。
11月8日投票日を迎えるこの中間選挙で、争点になりそうなのは困窮する生活者たちへの対応である。
食品価格が上がり、ガソリン価格が上がる。一方で、賃金は上がらないという、苦しい生活者たちを救うため、インフレを防ぐ、つまりは金利を上げていこうという姿勢につながりやすい。
また、現状のようにドル高であることは、そんな生活に困窮する家庭が、相対的に海外から安い価格で購買を可能にすることでもある。
この米中間選挙があり、国内では来年任期を迎える黒田日銀総裁の後任人事が決まる、少なくとも今年いっぱいは、この円安ドル高トレンドは継続するということだ。
しかし、来年以降は一方的な円安への動きは一服し、円高への巻き戻しの動きも出てくるだろう。